故チェ・ジンシルさんの足跡をたどる旅(上)

   わたしは今、彼女に会いに行く途中です。ほかの大勢の人たちと同じように、わたしも胸が苦しく、じっとしていることができませんでした。あまりにもあっけなく天国に行ってしまったチェ・ジンシルさん。今日はそんなチェ・ジンシルさんに会いに行くことにしました。

 北漢江沿いには今でもあちこちに彼女の痕跡が残っています。彼女が眠っているカプサン公園墓地は京畿道楊平郡楊西面両水里を見下ろし、北漢江の向こう岸には彼女が汗を流した南楊州総合撮影所があります。それだけではありません。大勢のファンをくぎ付けにしたドラマ『バラ色の人生』(KBS第2)のラストシーン、メンスン一家が穏やかな雰囲気の中で散歩したススキ林もここにあります。また、一瞬の幸せを描いた映画『手紙』の切ないシーンが、この川沿いでチェ・ジンシルを懐かしがっています。この美しい秋を彼女が見ていたらどんなに良かったことでしょう…。

 出発はソウル。ソウルを抜け、国道6号線から八堂湖まではすぐです。標識を見ながら両水里方向に走ると、両水橋の入り口に三つまたのロータリーがあります。にぎやかな繁華街を通り過ぎ、工事中の踏み切りを右折すると、川沿いの道に出ます。秋の風が吹く川辺はこんなにロマンチックなのに、ラジオから流れる音楽は憂うつなメロディーです。わたしは今、チェ・ジンシルさんに会いに行くところです。



◆チェ・ジンシルさんが眠る地「カプサン」

 右側にカプサン公園と書かれた標識が見えます。チェ・ジンシルさんが眠る公園の名前です。ソウル近郊とは思えないほど、静かな秋の風景が広がっています。黄金色の田んぼ、土の道、うるさいほどに鳴いている虫の声…そんな山道を歩きながら公園へ向かいます。

 チェ・ジンシルさんが最後に通った道は静かで小ぢんまりしており、坂を上るにつれうっそうと木が生い茂り、空が見えないほどです。遠くにリスのしっぽほどの空が見えるところで立ち止まり、ふと物思いにふけってみました。あの峠を越えればチェ・ジンシルさんが…。天国に行ったたくさんの人たちと一緒に、この小ぢんまりした平和な場所でゆっくり休んでいるはずです。

 その小さな峠を越えると墓地が見えてきました。チェ・ジンシルさんはこの墓地の一番高いところの右端にある「マムレの丘」で眠っています。チェ・ジンシルさんが生前通っていた教会の安息の地です。マムレとは、旧約聖書でアブラハムが3人の天使を迎えた場所のことだそうです。天使のようだったチェ・ジンシルさん。今ごろは本物の天使に会って笑っているでしょうか。遠くにマムレの丘が見えた瞬間、わたしの胸には悲しみがゆっくりと広がり始めました。一度も会ったことのない人だけれど、もう会うことはないという思いが悲しみとなり、胸を一杯にします。チェ・ジンシルさんはそこで花になっていました。



◆花になったチェ・ジンシルさん

 わたしが到着したその日は、まだ墓に故人の名前も写真も刻まれていませんでしたが、墓の前には花がたくさん並べられていました。日当りのいい場所にある墓の中で、チェ・ジンシルさんは心安らかに眠っていることでしょう。これからもずっとチェ・ジンシルさんを慕う人々がここを訪ねてくることと思います。鳥と虫の声しか聞こえてこないこの山の中で、チェ・ジンシルさんが寂しくないよう、たくさんの人に訪れてほしいです。



 チェ・ジンシルさんと別れ、今来た道を戻りながら、さっき立ち止まった峠で後ろを振り返ってみました。その墓の様子をしっかりと心の中にとどめるよう、しばらく見ていました。



パク・ジョンイン記者

【ニュース特集】チェ・ジンシルさん自殺

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