日本の文化をリードする「女優たちの力」

 7日午後、釜山・海雲台の釜山国際映画祭(PIFF)ビレッジの野外舞台。航空機にかかわる人々の日常を描いた日本映画『ハッピーフライト』の出演者や監督らが、ワールドプレミアのためファンの前に姿を現した。黒いショール姿で登場した綾瀬はるかが身振り手振りを織り交ぜながら「釜山サランヘヨ(大好きです)」と韓国語で叫ぶと、会場は熱く盛り上がった。前日、同作が上映された映画館には5000人余りの観客が集まり、大反響を呼んだ。先日釜山を訪れた上野樹里も、これに負けないほどの大歓迎を受けた。

 この二人が韓国に来たのは今回が初めてではないにもかかわらず、二人を迎えるファンの声はいつにも増して大きい。映画やドラマで清純キャラとボケキャラをうまく演じる日本の20代の女優たちは、最近の日本文化をリードする代表的な原動力だ。

◆「きれいな女優であること」を捨てると人気者に

 上野樹里(22)をはじめ、綾瀬はるか(23)、堀北真希(20)、仲間由紀恵(28)など、日本を代表する女優たちに共通するのは「天然ボケ」。特に漫画を原作にしたドラマの場合、女優たちは普段の清純なイメージを捨て、涙ぐましいほどコミカルに変身する。韓国ドラマ『ベートーベンウィルス』と比較される日本ドラマ『のだめカンタービレ』の主人公、上野樹里が代表的だ。同ドラマで上野樹里演じる「のだめ」は、5日間も風呂に入らず、1日で部屋中をゴミ箱のようにし、地面に落ちたものまで拾って食べるほど旺盛な食欲の持ち主として描かれている。

 綾瀬はるかも同じようなイメージの女優だ。19歳のときに主人公を演じたドラマ『世界の中心で愛を叫ぶ』で清純可憐な女優として人気を集めた綾瀬はるかを本物の「女優」にしたのは、昨年放送された『ホタルノヒカリ』だった。ドラマの中で綾瀬はるかは、恋愛からさっぱり遠ざかっていたことで「干物女」と呼ばれ、韓国でも「干物女シンドローム」を巻き起こした。外ではバリバリのキャリアウーマンだが、家に帰るとジャージ姿でビールを飲み、スルメをクチャクチャ噛みながらゴロゴロしている姿が印象的だった。

 『花ざかりの君たちへ』で男装に挑戦した堀北真希は、韓国でユン・ウネが男装のヒロインを演じたドラマ『コーヒープリンス1号店』のヒットとともに注目を浴びるようになった。一方、『ごくせん』できれいな顔には不似合いなジャージ姿で生徒たちにケリを入れる女教師山口久美子を演じた仲間由紀恵は、現在日本で最高の人気を集めている。「きれいな女優」であることを捨てた瞬間、彼女たちはスターに躍り出たのだ。

◆スター性は独立映画から

 釜山国際映画祭首席プログラマーのキム・ジソク氏は日本の女優たちの変身について、「独立映画の力だ」と強調する。制作される映画の半分は独立映画のため、トップスターが作家主義の映画に出演することにより、演技の幅を広げることができるという。視聴率が一番の目的のドラマでは、できる限り刺激的でドラマチックな魅力を完成させ、映画では「近所の女の子」のような演技に挑戦することにより、キャラクターの幅が広くなるというわけだ。

 また、女優たちが「遊ぶことができる」空間も広い。映画『天然コケコッコー』『東京少女』の主人公、夏帆(17)のように10代の女優が主人公を演じる作品が多く、女優も「品質」を守るラインで「多作」もいとわないということ。キム・ジソク氏は「香港では誰かが有名になろうとすると、デパートのイベントまで利用して俳優たちの価値を下げようとする半面、日本の芸能プロダクションは俳優たちのイメージ管理に全力を尽くす」と説明する。韓国の場合は有名な俳優であるほど「寡作」の傾向がある。

 日本の女優たちが演じるキャラクターは、日常的でありながらも立体的だ。韓国のラブストーリーやドラマが主にストーリーに重点を置いているとすれば、日本のドラマはキャラクターを中心に動くものが多い。『嫌われ松子の一生』や『メドン・ド・ヒミコ』など、主人公の個性がはっきりしている映画以外にも、「どんな内容か」より「どんな主人公か」の方に力を入れた作品が一般的だという説明だ。清州大学映画学科のシム・ウンジン教授は「日本では普通、キャラクターがドラマを率いるが、韓国は物語の中にキャラクターが埋もれてしまいがちだ。抑圧された社会であるほど、文化の中のウソとタブーを楽しみながら、非現実的で劇的なキャラクターを主人公にする傾向がある」と分析した。

釜山=チェ・ボユン記者
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