東京の護国寺駅(地下鉄有楽町線)の隣に位置する出版社、講談社の本社ビル。夜7時を過ぎ、辺りは暗闇が立ち込めてきたが、雑誌『Kiss』の編集者たちは締め切りが迫っていて、帰れない状態だった。経歴20年のベテラン漫画編集者である三河かおり(44・写真)さんもその中の一人だ。彼女は2001年からこの雑誌で連載されている人気漫画『のだめカンタービレ』(二ノ宮知子作)の担当を務めている。彼女は「二ノ宮さんも私も(漫画が売れた)おかげでボーナスをもらったが、一番喜んでいるのは会社だ」と笑った。
―漫画家とはいつ出会ったのか?
「20年前から知っていて、一緒に仕事をすることになりました。当時も固定ファンがいましたが、大衆的な人気には至りませんでした。才能があるのになぜ売れないのか、と心配もしました(笑)」
―『のだめカンタービレ』の人気を最初から予感したか?
「いいえ。2002年1月に単行本の1巻が出たとき、予想販売高を10万部ほどに見積もりましたが、2万部しか売れなかった。でも読者の間で面白いという口コミが広がり、5巻になると書店注文が殺到しました」
―漫画家とはどんなふうに仕事をするのか?
「締め切りが迫ると、1時間半ぐらい離れた二ノ宮さんのお宅に朝から伺って原稿作成を手伝い、5枚ずつ完成するたびにクイックサービスで原稿を送ります」
―人気の秘訣は?
「一度も不満をもらしながら仕事をしたことがありません。何でも適当にやり過ごしてはいけないという共通の考えはありましたが、作業過程ではとても面白く、楽しみながら仕事をしました。
それが成功の秘訣ではないでしょうか」