原油高の影響で首都圏地域の観光地が人気を集めている。中でも温泉で有名な忠清南道牙山は、ソウル駅から韓国高速鉄道(KTX)で40分もあれば到着するため、気軽に出かけられる観光地として人気がある。特に最近、牙山市が温泉の名所としての復活を宣言、道高地域ではプール施設を整えた温泉テーマパークがオープンするなど、心と体をリラックスさせることができる「ステイ型観光地」として定着しつつある。このほか、田舎の情緒を満喫できる外巖里民俗村やピナクルランド、世界花植物園など、華やかな庭園、韓国で最も美しい聖堂といわれる貢税里聖堂、アルムドゥリ松林が続く鳳谷寺の森の道など、「ゆったりとした美学」の中に浸ることができる家族向けのテーマ別観光地がそろっている。
◆伝統文化が息づく「外巖里民俗村」
韓国の伝統民俗村の中では最も自然な雰囲気を持つ。見せるための民俗村ではなく、86世帯が実際に生活をしているのがここ「外巖里民俗村」だ。
忠清南道牙山市と天安市の境界をなす広徳山の山すそにある外巖里民俗村には、約500年前にこの村に住み始めた禮安李氏の一族が現在も暮らしている。代々傑出した人物が多く、大きな家が建てられるようになり、現在も昔の姿をそのまま残した高台広室(大きくよくできた家)があちこちに残っている。各家の塀の向こうに見える庭の風景は人々の心を和ませる。苔の生えた石畳を歩いていると、村の歴史が肌で感じられるはずだ。
外巖里民俗村はどの季節も美しいが、中でも村の野原が黄金色に染まる秋の景色が特に素晴らしい。村の入り口に立てられたチャンスン(村の守護神として立てたもの)をはじめ、朝鮮時代の生活の様子を垣間見ることができる踏み臼、ひき臼、水車、わらぶきの家などが保存されており、そのほかにも村にはたくさんの民俗遺物が残っている。国家指定の民族資料第195号である牙山外巖里参判宅が代表的な建築物だ。
◆体にやさしい「温泉紀行」
牙山市の代表的な観光テーマは何といっても「温泉」。1300年の歴史を持つ温陽温泉、東洋4大硫黄泉の一つといわれる道高温泉、温泉テーマパークの牙山スパビスなどがあり、日常の疲れを癒すことができる。道高面にある道高温泉は単純硫黄泉で水質がよいことでも定評がある。特に牙山市は温泉観光の活性化のため、来年は温泉エキスポの開催を計画するなど、温泉タウンの造成を目標にし、地名も「牙山温泉市」に改名する案を検討している。
牙山市の温泉復興には韓国の有名ホテルも積極的に取り組んでいる。中でも代表的なのは「パラダイス・スパ道高」。パラダイス・グループが今夏、道高面のパラダイス・ホテル隣のプールに、5000人収容可能な広さ2万4000平方メートルの「パラダイス・スパ道高」をオープンした。道高温泉駅からバスで10分。
◆ほっとする風雅な趣
●貢税里聖堂
秋には紅葉が美しいことでも有名なところだ。牙山市仁州面貢税里の牙山防波堤前ロータリーの近くにある貢税里聖堂の周りには木がうっそうと生い茂り、秋には見事な紅葉を見せる。このため韓国で最も美しい聖堂の一つとされ、映画やドラマにもよく登場する。この聖堂は忠清道地域のカトリック初期の本堂の一つで、この地域で2番目に古い歴史を持つ。最初の聖堂は1895年に建てられたが、現在のゴジック式の建物はフランス出身のソン・イルリュン(エミリオ)神父が1922年に中国人の技術者を連れてきて建てたもの。ゆっくりと聖堂を一回りすると、心と体がリフレッシュされていくのを感じるだろう。
●鳳谷寺
古い寺の庭には必ず木が生い茂った散歩道があるもの。この道を歩いて寺に向かい、古い境内の静かさの中にたたずむと、体の中にたまった垢が洗い流されるような気分になる。牙山市松岳面の鳳首山の山すそにある、新羅時代から伝わる鳳谷寺と森の中の散歩道はいつ行っても風雅でロマンチックな趣がある。この森は真夏は清涼な雰囲気を、秋には落ち着いた雰囲気をかもし出す。
◆華やかで自然親和的な空間
●世界花植物園
道高面鳳農里の「世界花植物園」は牙山市でも最も華やかな場所だ。2万6000平方メートルのガラスの温室に約1000種・1000万本の花が咲き乱れている。「世界ツバキ館」には約100種のツバキの木が、ハーブの花と一緒に植えられており、「球根館-超豪華館」では数十種のユリが甘い香りを振りまいている。一年中、ツバキ・フェスティバルやユリ・フェスティバルなど、20種余りのテーマで花のフェスティバルが開催されている。
●ピナクルランド
忠清南道牙山市霊仁面のピナクルランドは、牙山市を代表するボタニカル・ガーデンだ。牙山湾の防波堤近くの8万2000平方メートルの敷地にテーマ別の小さな庭園と散策路、広い芝生などがある。「高峰の地」という意味を持つピナクルランドは、入り口までメタセコイアの街路樹が数百メートルにわたり続く。開園時間は午前10時から午後9時まで(週末は午後10時まで)。入場料は大人5000ウォン(約490円)、青少年4000ウォン(約380円)、子ども3000ウォン(約280円)。
◆旅行メモ
●アクセス=竜山駅からKTX(1日51本運行)に乗り天安・牙山駅で下車。所要時間39分。
●シティツアーバス=KTXに乗って牙山に行く場合、観光コースを回るならシティツアーバスが便利。牙山市は市内の主な観光地を経由する「温陽温泉シティツアー」を運行している。温陽温泉バスツアーは木・土・日のコースと月・火・水・金のコース(団体30人以上)に分けて運行中だ。KTXの駅舎の隣に長項線の牙山駅があり、乗り換えも可能。牙山駅の次の駅が温陽温泉駅だ。KTXの駅舎から温陽温泉駅までは長項線で約10分。
大人6000ウォン(約540円)、子ども・高齢者4000ウォン、10人以上の団体やKTX・鉄道の乗車券を持っている場合はシティツアーの料金から一人当たり1000ウォン(約94円)割引。申し込みは市のホームページ(www.asan.go.kr )から。