-良い作品とそうでない作品の基準は?
「余韻の残るドラマがいい作品だと思います。一時、ドラマへの出演を避けた時期がありました。ドラマは放送される数カ月だけ話題になるものです。最終回の後は「昔そういうドラマがあった」程度にしか人々の記憶に残らない。それが嫌だったんです。そのときは大ヒットしてもすぐに忘れられていくドラマには出演したいと思いませんでした。また、ドラマのシステム自体にも反感を持っていました。1週間に2話分を撮影するじゃないですか。死にもの狂いで最善を尽くしても高い評価を得るとは限らない。そんなハードなスケジュールの中で好評を得るのがおかしいくらいです。『エデンの東』もかなり努力して予め撮影をしておいたにもかかわらず、いざ放送が始まると、やはりスケジュールがきつくなってくる。余裕ある撮影をするのは簡単なことではないんです。いつになったら韓国ドラマに事前制作というシステムが定着するようになるでしょうか?」
-ソン・スンホンの限界はどこにあると思うか?
「ファンたちが僕に限界を越えさせてくれました。僕には不相応なほどの期待と応援にいつも励まされています。最初に演技を始めたのがストームというメーカーのジーンズの広告でした。カフェでウエイターをしていたとき、ストームのデザイナーの方が名刺をくれたんです。そしてまったく準備のできていない状況の中で、いきなりデビューすることになりました。そのときまでも僕はテレビに出てくる人は神様に選ばれた人で、映画に出てくる人は国に選ばれた人だと思っていました。芸能界とはまったく関係のないと思っていた僕がデビューすることになり、10年という月日が過ぎました。最近になって「これまで本当に怠け過ぎた。みんなの応援に比べ、僕の努力が足りなかった」と後悔することが多くなりました。だからこそ焦っているし、できる限りの最善を尽くしたいと思っています」
-10年間演じてきた作品の中で一番大切な作品2つを選ぶとしたら?
「まずはデビュー作のシチュエーションコメディ『男三人女三人』でしょうね。確か96年10月23日だったと思います。今見てみると、本当に正視できないほど下手くそですが…(笑)。その作品は僕のデビュー作でもありますが、遺作になった可能性もありました。後になって聞いた話ですが、上の方々が『あいつどこから出て来た奴なんだ』といいながら僕を降板させようとしたそうです。そんな僕がこんな風に10年以上身に余る応援をしてもらっているのは想像できないほど大きな幸運だと思っています。もうひとつは『秋の童話』という作品ですね。大ヒットしたせいかもしれませんが、そのときの監督がいつも『真面目に演技しろ』と強調されました。セリフをうまく話す必要はなく、かっこよく見える必要もないから、今の自分の状況の中でできるだけ真面目に演技しなさいと。それが俳優というものかもしれないと、今でもこの言葉を心に刻み込んで演技に臨んでいます」