「小豆カルグクス(手打ちめんの一種)」といえば故郷を思い出す人が多いだろう。冬至のときだけでなく、母親がよく作ってくれるごちそうだった。手間のかかる白玉がなくても、めんさえあれば簡単に作ることができるからだ。調味料をまったく使っていないのにコクがあって香ばしい味わい。それはまさにお袋の味だった。なべを持って市場に小豆カルグクスを買いに行った思い出がある人も少なくないだろう。筏橋、求禮、長興、南海など、今でも南の地方の市場に行くと1500‐2000ウォン(約140円‐190円)で小豆カルグクスが売られており、その味は郷愁を誘う。
京畿道高陽市孝子洞にある「五友歌」の小豆カルグクスは、まさに故郷で食べた「あの味」。ほとんどの店は煮た小豆を丸ごとミキサーにかけて作るが、そうすると口当たりが悪くなる。この店はミキサーにかけた小豆をこしているため、味わいが柔らかくなめらかだ。もち米を砕く機械も設置し、毎日小豆を煮ている。持ち帰りの客や、両親を連れてくる中年客が多いのも、このカルグクスに込められた真心を感じるからだろう。1杯5000ウォン(約480円)、白玉入りは1000ウォン(約93円)追加。砂糖より塩を入れて食べた方が美味しい。
タコビビンバもこの店ならではのメニューの一つ。辛く炒めたタコのぶつ切りがビビンバの上にたっぷりのっている。ズッキーニの千切り炒め、豆モヤシ、千切り大根、ホウレンソウ、春菊と一緒に交ぜると、タコのプリプリした食感が生きた一味違ったビビンバになる。値段は6000ウォン(約560円)。サムハプ(ガンギエイとゆでた豚肉をキムチに包んで食べる料理)は発酵させたガンギエイが薄く切られているため、初めてでも抵抗なく食べることができるはず。冷やした石の上に盛られて出てくる。豚肉もあっさりしている。値段は3万ウォン‐5万ウォン(約2800-4800円)。
どの料理にもサービスで冷たく酸っぱいワカメのスープが付いており、ワカメも肉厚で良質なものを使っている。また、ちょうどよく発酵した若大根のキムチにも女主人の料理の腕が感じられる。どこの料理なのか分からないこの店のメニューの共通点は、オーナー夫婦が故郷・務安の家で作って食べていた料理だということ。
店の名前は書道家のオーナーが詩人・尹善道(ユン・ソンド)の詩『五友歌』から取ったもの。店内には書道の作品や東洋画が天井にまで張られており、陶磁器もたくさん飾られている。ガンギエイのにおいも染みている。少し整理した方がいいのではとも思えるが…。座席数40席。そのほか40人が入れる大部屋が二つあり、団体客でもOK。駐車場は広く30台駐車できる。
旧把撥洞の北漢山城入り口から松湫の方向に2キロ進み、5番目の信号を左。孝子碑の向かい側にあり、登山客の常連が多い。オーナーの自宅でもあるため年中無休。