最近の飲食店はまるで味覚を崩壊させる競争を繰り広げているかのようだ。売る人も食べる人も、豪華で刺激的な料理でなければ満足できなくなっている。化学調味料をたっぷり使う店も多く、食べた後に口の中がザラザラし、胃がもたれ、頭まで痛くなることもある。そんな中、「イ・ソヨンのまかない屋の韓食」は正反対の料理を食べさせてくれる。丁寧で心がこもっているだけでなく、味があっさりとしていて深みがある。胃はもちろん、心まで穏やかになる味だ。
食器類はすべて真ちゅう製のものを使っている。5000ウォン(約530円)の温めんを注文したら、おかず4種とお好みでめんに加えて食べる薬味が真ちゅうの器に盛り付けられて出てくる。おかずのワカメいため一つを見ても、丁寧に作られているのが分かる。ワカメの茎を水に浸して塩気を抜いた後、長めの千切りにした青唐辛子とタマネギを一緒にいためている。白菜キムチの浅漬け、千切り大根の唐辛子あえ、モヤシのナムルもあっさりしていて、真心が感じられる味だ。
温めんのスープは肉を煮込んだスープのように白いが、干しスケトウダラの頭と煮干し、シイタケ、各種野菜を煮込んで作ったものだという。めんも口当たりのいい硬さにゆでられている。同じスープにそうめんを入れたもの、ワラビやキキョウの根、モヤシ入りのユッケジャン風「辛い温めん」もすべて5000ウォン。
松の実と豆スープそうめん(6000ウォン=約640円)は濃厚な豆のスープにめんを入れたもの。所々に黒く見えるのは黒豆。栄養分を逃さないよう、ふるいにかけず、黒豆、白豆、ゴマ、松の実を2度うすでひいたという。濃すぎず純朴な味わいだ。キノコ、牛肉、ネギ、白菜、エゴマの葉をめんと一緒にグツグツ煮ながら食べるククス・ジョンゴル(鍋)は1万ウォン(約1060円)。
めんだけでは物足りないという人には肉、カキ、緑豆ジョン(韓国風お好み焼き)、タラのジョン(各1万ウォン)、ジョンの盛り合わせ(2万ウォン=約2120円)を一緒に注文するのがお薦め。それぞれあっさりした味わいでまったく脂っこくない。めん専門店としてオープンしたものの、夜になると顧客が少なくなってしまうため、ユッケジャンや干しスケトウダラのスープ、キムチチゲ(それぞれ5000ウォン)も追加した。独特なめん専門店になったはずなのに残念だ。
この店は天然調味料だけを使用することで有名なデパ地下の総菜屋、「イ・ソヨンのまかない屋」を営むイ・ソヨンさんが2年前にオープンした店。化学調味料、色素、動物性油などは一切使用せず、天然の材料だけを使って味付けしている。油やしょうゆもそのままでは使用せず、各種野菜と一緒に一度火を通したものを使用している。控えめの味付けに、イさんが学んだ宮中料理の気品がにじみ出ている。刺激的な味に慣れた人にとっては「味が薄い」と感じられるかもしれない。
ソウル市江南区の新沙洞ロータリーから江南駅の方向に200メートル進み、右側の外換銀行を右折、最初の交差点の先に見える「キンパプ天国」から3軒目。44席で5台駐車可。日曜日が定休。