昨年韓国で放送され、視聴率35.7%をマークしたファンタジー時代劇『太王四神記』(MBC)。日本を韓流ブーム一色に染めたスター、ペ・ヨンジュンが主人公の広開土大王・談徳(タムドク)役を演じ、国民的ドラマ『砂時計』でゴールデンコンビと呼ばれた金鐘学(キムジョンハク)プロデューサーと脚本家ソン・ジナが手を組んだ作品として、韓国だけでなく日本でも大ヒットするものと期待されていた。
しかし、ふたを開けてみると結果はどうだっただろうか。現在、『太王四神記』はNHK総合で毎週土曜日夜11時10分から放映されている。最終回が9月27日に迫っている中、視聴率は7%前後だ。ヒットとは言いがたい数字だろう。ペ・ヨンジュン・ブームのきっかけとなった『冬のソナタ』が視聴率20%以上だったことを考えると、なおさらだ。「視聴率7%」は現在の韓流ドラマの苦悩をありのままに物語っている。
◆日本人には難しい「ファンタジー時代劇」
『太王四神記』について、日本人がまず話すのは「とても難しくて複雑だ」ということだ。韓国と違い、日本で時代劇は視聴率10%を上回るのが難しい。『太王四神記』は目を見張るようなコンピューター・グラフィックスや個性あふれる魅力的な登場人物が売りだが、韓半島(朝鮮半島)の高句麗時代を描いたという点では、日本人にとって「海外の時代劇」に過ぎない。過去と現在、神話と歴史を行ったり来たりするストーリー展開も、日本人には難解だ。
フリーライターのアベ・リュウコ氏は「『冬のソナタ』は途中から見始めてもすぐに入り込むことができるドラマだったが、『太王四神記』は初回から集中して見ても難しい」と話す。
◆日本では今も「ペ・ヨンジュン=冬ソナ」
日本の大手芸能プロダクション「ホリプロ」のノムラ・ダイスケ氏は「ペ・ヨンジュンさんが眼鏡を外し、馬に乗って敵と戦うヒーローに変身するのはちょっと不思議な感じ。ほとんどの日本人女性は、今もペ・ヨンジュンさんに“純粋な愛のイメージ”を期待している」と語った。『冬のソナタ』の影響がまだ強いということだ。日本の大衆文化評論家フルサ・マサユキ氏は「日本人が持つペ・ヨンジュンのイメージは、今も『冬のソナタ』のジュンサン。だから映画『スキャンダル』や『四月の雪』も予想を下回る興行成績だった」と説明する。
だが、ペ・ヨンジュンに対する日本のファンの熱気は変わらない。ペ・ヨンジュンは今年6月、京セラドーム大阪で開かれた「ドラマ『太王四神記』プレミアムイベント 2008 in JAPAN」でファン約3万5000人を集めた。しかし、ドラマのヒットは「ヨン様ファン」以外の人々を集めなければ達成できない。『冬のソナタ』は30‐50代の女性を主軸に男性や10代の視聴者を集め、視聴率20%を突破した。
◆『太王四神記』の敵はインターネット?
インターネットは視聴率を奪う「隠れた敵」だ。フルサ・マサユキ氏は「情報通信の環境が向上したため、韓国の視聴者が『太王四神記』をテレビで見ていたとき、 多くの日本人もインターネットで同時に見ていた。今、NHKで放送されている『太王四神記』は日本人の声優がアフレコしており、“ペ・ヨンジュンさん本人の声が聞けない”と不満を漏らす人も多い」と話す。『太王四神記』のDVDボックスが早々に売り出されたため、テレビ放送の視聴率に悪影響を与えているという見方もある。
◆地上波放送に踏み切るのが早すぎた?
韓国ドラマは普通、日本では衛星チャンネルで放送された後、地上波に進出するが、『太王四神記』も衛星放送から地上波で放映された後、再び衛星放送で放映される予定。「ペ・ヨンジュン」というネームバリューに対し信頼が厚いからだ。同ドラマの投資・配給会社であるSSDのキム・ウィジュン代表は「10月からNHK衛星で放送され、また別の日本の放送局を通じ、扇状にコンテンツが広がっていくだろう」と語った。韓国放送映像産業振興院のキム・ヨンドク研究員は「このドラマにはファンタジー的な要素があまりにも多く、中年男性を視聴者として引き込めなかったのでは。しかし、夜11時台で視聴率7%ならそれなりに善戦しているとも言えるため、今後が楽しみ」と話している。