スエ「映画を通じ新しい自分を見つけた」


 「映画『あなたは遠いところに』はわたしの“自分探しの旅”でもありました」

 女優スエは「スニ」であり「ソニ」だった。そしてパク・スエ(スエの本名)でもあった。スエは以前よりひと回り大きくなったように見えた。映画『あなたは遠いところに』(イ・ジュンイク監督)でもそう感じ、実際のスエに会っても同様の印象を受けた。スエは夫を探すため、ベトナム戦のど真ん中に飛び込む純粋な田舎の嫁「スニ」を演じた。いや、ベトナム慰安公演団の人気歌手「ソニ」を演じた。そしてパク・スエを見つけた。

 「映画を撮影しながら、スニになり、ソニになり、最後にはパク・スエ自身を見つけたと感じました」

 スニがベトナム戦争の中で人生と愛を学びながら一人の人間として成長したように、スエもその軌跡に従い、一人の女優として、そして人間として成熟した。ちょうどスエはまもなく30歳を迎えようとしていた。撮影中、これまで知らなかった感情を得ただけでなく、過去の自分に足りなかった点に気が付いたという。

 「この作品を演じながら、以前は作品の10%程度しか理解していなかったということを知りました。自分が成長しているということをはっきり感じました」

 スエの成長は名監督イ・ジュンイクだったからこそ可能だった。イ・ジュンイク監督の「台本を見るな」という指示に最初はかなり戸惑った。ほとんどの俳優はシナリオに答えがあると思い、台本を一生懸命読んで分析するのが当然だと思っているからだ。しかしイ・ジュンイク監督は、台本の代わりに雑談を選んだ。


 「最初は本当にもどかしかったです。監督は1日に3時間ずつリラックスした雰囲気の中でわたしと一緒にお茶を飲み、演技のための準備をされました。新しい方法だったけれど、セリフより感情に没頭して演技をするわたしによく合っていたと思います」

 すべてが目新しい撮影だったが、演技と余裕を学びながら、女優としての「欲」を育てる過程でもあった。そしてこのような「欲」は、以前は見せることのできなかったさまざまな演技を生み出した。トレードマークの清純さに加え、これまで見られなかったセクシーさや大人の女性の雰囲気まで、幅広い魅力を発揮した。「今回の作品で自分の壁を知りました。撮影はその壁を乗り越えるための作業でした。苦労した分だけ自信もつきました」

 最初は照れくさくてうまくできなかった歌とダンスも、自信がつくにつれてどんどん上達した。特別なテクニックのない落ち着いたスエの声は、映画の情緒をありのまま表現することに成功した。

 「スニとソニはわたしがこれまで演じてきた中で最高の役でした」

 「新生」スエを見ることができる同作品は24日から公開されている。

パク・ジョングォン記者
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c)Chosunonline.com>
関連ニュース