1815年にナポレオン没落後、パリに入城した兵士たちがレストランに殺到し、「ビストロ、ビストロ」と叫んだ。「早く、早く」という催促の言葉だ。この言葉から由来したという「ビストロ」は、レストランより軽く、カフェよりは格式ある料理を食べられるところだ。親しみやすくカジュアルな雰囲気、お袋の味に近いメニューで、フランスの日常的風景の一つでもある。
ソウル市江南区三成洞のビストロ「L’Eespoir」はテクニックよりも基本、華やかさよりも本場の味を目指すフランス料理のレストランだ。コースの始まりはフランス人が大好きなタマネギのスープ。粗く摩り下ろしたタマネギを弱火で長時間炒めたものにワインを加え、フランスパンとチーズをのせる。甘いタマネギ、熱いスープ、コクのあるチーズが一体となった、個性の強いスープだ。フランス人は風邪を引いたとき、このスープが一番飲みたくなるという。
メイン料理はフランス人がよく食べる鴨またはアンコウ料理の中から選ぶ。伝統的フレンチスタイルの「鴨のコンフィ」は、肉がこの上なく柔らかい。肉から出る脂でゆっくり焼いた料理だ。12時間寝かせておいた骨付きのもも肉を90‐100度のオーブンで10時間ゆっくりと焼く。
フランスでは高級魚のアンコウは、身の部分に小麦粉をつけムニエルにする。さっぱりして食べやすい。どちらも韓国ではなかなか食べられない料理だ。
メインの前後に、塩漬けして果物の中に寝かせておいたサーモン、アイスクリームとチョコレートケーキ、紅茶かコーヒー、ケーキがついて4万8000ウォン(約500円)。ランチとディナーのコースがある。ディナータイムだけの「グルマン・コース」は6万5000ウォン(約7000円)。スープ、サラダ、牛肉のタルタル、フォアグラまたはロブスター、デザート、紅茶というコース。ランチタイムにはパスタ(1万3000‐1万5000ウォン=約1400‐1600円)もある。なお、すべての料理には10%の税金が加算され、ワインはハーフボトルでも注文できる。
料理は全体的に塩辛い。より濃厚な味にするため、それぞれの食材に塩で下味をつけているためだというが、食材本来の味を消してしまいかねないほどだ。チョコレートケーキとプリンが原型と違う点も気にかかる。
オーナーのイム・ギハクさんとチョ・ソンボムさんは大学でそれぞれ声楽とファッションを専攻していたが、フランス料理に魅了され、専攻を料理に変更したという。米国のジョンソン&ウェールズ大学、フランスのル・コルドン・ブルーを卒業した二人の若いコックの情熱と意地が感じられる店だ。
店には4人用のテーブルが二つ、二人用のテーブルが四つある。要予約。駐車場は店の前後に5台ほど。日曜日が定休日。サンア・マンション3棟の向かいの路地を入り、スターバックスの正面。清潭駅6番出口から30メートル。