「ここが本当に油で真っ黒だった海岸ですか。奇跡のようにきれいになった姿に心が洗われる思いです」
10日午前、忠清南道泰安郡南面の青浦台海水浴場。霧のかかった白い砂浜を若者たちが素足で走っていた。来月5日、「エコ・ヒーリング泰安サンドビスタ・マラソン大会」を開催するため、現場の点検を行っている大田・忠清南道地域の郷土焼酎メーカー「ソニャン」の職員たちだ。「一度、素足で砂浜を歩いてみてください。柔らかい砂の感触が最高です」と話すパク・ジョンウォン課長(35)は、「海岸には小さなカニがたくさんいて、砂浜も完全に元通りになりました」と嬉しそうに語った。
泰安郡とソニャンが主催し、朝鮮日報社が後援するこのマラソン大会は、青浦台海水浴場と夢山浦海水浴場間の往復8キロの砂浜を裸足で走り、泰安の海岸の「復活」を体で体験するイベントだ。制限時間3時間のため、ゆっくり歩いてもゴールできる。大田鶏足山「裸足で歩こう」イベントを最初に提案したマラソン好きのチョ・ウンレ・ソニャン会長(47)は、「今回のイベントは泰安地域の海水浴場が復旧されたことを世に知らせる場になるでしょう」と話した。参加申し込みはインターネット(www.sandvista.co.kr)で受け付けており、参加費は無料。マラソン以外にも泰安伝統の魚獲り「トクサル」体験をはじめ、ギンポ釣り、黄土パック、裸足の拓本、夕日音楽会などが行われる。
昨年12月7日に発生した原油流出事故により海岸が油で真っ黒に染まった泰安地域は、6カ月という時間の流れの中で再び元の青さを取り戻し、海岸には白い砂浜が顔を出した。全国各地から延べ122万人のボランティアたちが泰安に集まり、懸命に油を取り除いた成果だ。現在、泰安地域の防除作業は最終段階に来ている。接近の難しい一部の島と海水浴場の岩盤区間で最後の防除作業が行われている。泰安郡はほとんどの防除作業が最終段階に入ったことにより、9日から公式にボランティアの受付を終了した。
住民たちの生計に対する不安は相変わらずだが、絶望を乗り越え、再起に向かう動きが活発になっている。渡りガニ漁船「第一号」のヒョン・ドゥシム船長(51)は、「一時、操業ができず暗たんとした思いだったが、最近は漁獲量が増えてきたので少し安心している」と話す。
また、観光客も徐々に増えつつある。4月末から5月にかけ、泰安で相次ぎ行われた水産物フェスティバルの会場には、週末になると最大1万人以上の観光客が訪れ、停滞していた泰安地域の経済が少しずつ活気を取り戻している。食堂を運営するキム・ミスクさん(46)は「売り上げは例年の半分程度にしかならないけれど、少しずつ顧客の数が増えている」と話した。
黒い油の悪夢から目覚めた泰安地域の海水浴場は、観光客を迎える準備を進めている。泰安地域にある32の海水浴場のうち、防除作業が遅れている4カ所を除く残りの海水浴場は、6月末から7月初めにかけて一斉に海開きをする。泰安郡は観光客の安全性に対する懸念を解消するため、海開きを前後して海水浴場ごとに3回ずつ水質を検査し、その結果を郡のホームページに公表する予定だ。
忠清南道は27日、泰安郡万里浦からスタートし、28日に保寧市の大川、7月1日には舒川郡の春長台海水浴場などで1万人余りのボランティアと住民が参加する「ボランティア大感謝祭」を開催する。海開きに合わせ、ボランティア参加者たちに感謝の思いを伝え、きれいになった西海岸を世に知らせるためのイベントだ。
ボランティアの様子を撮影した映像をはじめ、優秀なボランティア参加者の表彰式、国民への感謝のメッセージを伝えるイベントが行われる。また芸能人の祝賀公演、写真展、ボランティア博覧会なども開催され、西海岸の農水産物の試食や販売コーナーも設置される予定だ。保寧市の大川海水浴場では28日に歌手キム・ジャンフンのチャリティーコンサートが行われ、ボランティア参加者たちの労苦をねぎらう。これに伴ない、観光客の交通の便宜を図るため、KORAIL(旧・韓国鉄道公社)は「西海岸をよみがえらせる観光列車」を特別運行することにした。
国土海洋部は美しい海を取り戻した泰安の姿を世に知らせるため、2005年から毎年釜山で行われていた国際海の水泳大会を、今年は来月12日に万里浦で開催する予定だ。さらに政府は住民の生計を支援するため、200億ウォン(約20億円)を投入し、公共勤労事業を繰り広げる計画だ。また、1月以降支給されていなかった防除手当て200億ウォンも早急に支給する方針だ。
泰安郡は20日、献身的な復旧活動を繰り広げ、泰安をよみがえらせることに大きく寄与した30人を「名誉郡民」に選び、表彰する。泰安のチン・テグ郡守は「ボランティアに来てくださった人々に恩返しできるようなさまざまなイベントを開催したい。多くの人々によって成し遂げられた『泰安の奇跡』を改めて確認してほしい」と語った。