気丈なイ・ドンゴン、悲しみ新たに


 だいぶやつれた様子だった。黙々と弔問客に応対するイ・ドンゴンの目は、一生分の涙を流し尽くしたのか、赤く充血していた。

 もうすぐ日付が変わり、29日午前0時になろうというころ、ソウル市江南区逸院洞のサムスン病院斎場に設けられた弟の焼香所を守るイ・ドンゴンは、弔問客に応対するたび、気丈に振る舞おうとしていた。

 隣に立つ父親のためにも、悲しみが伝わらないようにイ・ドンゴンは努めて淡々とした表情で人々を迎えているようだった。

 焼香所には深夜まで故人をしのぶ人々の列が続いた。むせび泣く友人にかける言葉がなく、ただ体をさすっている人もいた。皆一様に故人の死を悼んだ。

 イ・ドンゴンとその父は、焼香所を訪れいたわりの言葉をかける人々に「祈ってやってください」とだけ答えていたが、その様子からは悲しみと感謝の気持ちが溢れていた。

 20日に悲報に接し、急きょオーストラリア入りしたイ・ドンゴンは、現地で事件の経緯を確認し、弟が留学していたシドニー大学での追悼式にも出席した。イ・ドンゴンは体力的にも精神的にも疲労の限界に達しているはずだが、そうした様子はまったく見せなかった。

 イ・ドンゴンは28日午後6時20分ごろ、弟の遺骨を胸に仁川国際空港に到着した。迎えに来た知人らがこらえきれずに涙を流しても、報道陣のフラッシュを浴びても、口を硬く結んだまま、黙々と歩いていった。

 悲しみを胸に焼香所を守るイ・ドンゴンの姿に周囲の人々は一層涙している。

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