平凡なのにクセになる、行列のできるククス店

竜仁・城北洞の「田植えチャンチククス」

 土曜日の午後2時ごろ、噂の「田植えチャンチ(宴)ククス(汁のある素麺)」の店に行ってみた。行列のできる店とはいえ、午後2時だったら昼食の時間は終わっているし、空いているだろうと思ったからだ。しかし店に入ろうとすると、一人の女性が申し訳なさそうな顔で「待機番号が35番まで進んでいる。申し訳ないけれどまた次の機会に来てほしい」と言ってきた。「ソウルから人づてに聞いてやっと来たのに」と頑張ってみたが、その女性は頑として受け付けなかった。

 一体どんなククスなのだろうか。意地になって数週間後の土曜日、もう1度その店に行ってみた。午後3時を過ぎれば大丈夫だろうと思ったところ、待機番号は14番。私たちを門前払いしたあのときの女性は、レジに立って待機番号を配り、順番に番号を呼ぶために忙しいこの店のオーナーだった。約30分待つと、やっと順番が回ってきた。そのころには順番を待つ人の列はなくなったが、店を訪れる人の足は4時過ぎまで続いた。

 ククスは一見平凡だ。比較的太い麺と薄い醤油色のスープ。上にはニラと千切りのニンジンがのっている。一口食べてみると、思ったよりも味が薄いような気がした。煮干でダシを取った濃いスープを想像していたせいか、予想外の味だった。これが「何日が過ぎるとまた食べたくなる」という「クセになる味」なのだろうか。化学調味料は使わず、大根を入れて長時間煮込んだような水っぽい味だ。

 スープの真価は食べているうちにジワジワと分かってくる。余計なものが一切入っていない、単純だけれど深い味わい。キムチや長ネギ、きざみ海苔などをのせた屋台の複雑な味わいのククスとは違い、あっさりとして後味がよい。食べれば食べるほどもっと食べたくなる。太めの麺がちょうどいい具合に茹でられており、適度な歯ごたえがある。

 オーナーは、スープには煮干を使っていると話す。「煮干の生臭さをなくするため大根と玉ネギを入れて煮込んでいるが、その比率がポイント」とだけ、スープの秘訣を教えてくれた。煮干以外にもう一つの材料を使っているというが、それについては秘密だそうだ。江原道高城郡にある実家の母親から受け継いだ味だとか。「田植えチャンチククス」という屋号は、田植えのときに昼食として準備するククスのように、心を込めて作ったものという意味。2000年に4席ほどしかない狭い店からスタートしたが、途中で一旦店を閉め、06年に再びオープンしたという。

 メニューはチャンチククス(3000ウォン=約300円)、大根の若菜のキムチとキュウリで甘酸っぱく和えたピビンククス(4000ウォン=約400円)のみ。おかずはキムチの浅漬け1種類だけ。にもかかわらず家族連れの多い週末は、店が終わる午後9時30分まで休む間もないほどの忙しさだ。平日はやや余裕があるとはいえ、昼は午後3時まで、夕方は午後6時30分から混み始める。並ぶのが嫌な人や、家族のために持ち帰る人だけで30‐40人にはなるという。すぐにのびてしまう麺類のテイクアウトは珍しい。練炭の暖炉だけが置かれた素朴なホールに、4人がけのテーブルが九つしかない店の裏に20台収容可能な駐車場があるのが不思議に思える。

 この店のククスの味は、人によって好き嫌いがあるかもしれない。濃厚なスープが好きな人にとっては水っぽいと感じる可能性もある。遠くから訪れる人は混雑する時間は避けた方が無難。また、「材料価格高騰のため、5月から値上げします」という注意書きが貼られている。店の住所は竜仁市水枝区城北洞46‐3。ソウルから行くには、内谷洞‐盆唐高速化道路か京釜高速道路盆唐インターチェンジから23番国道→豊徳川ロータリー→水原方向へ1キロ→歩道橋のあるY字ロータリー→右側1時方向に入る狭い2車線道路を300メートル→斗山研究院ロータリー直前を左へ。第2・4月曜日は定休日。

オ・テジン記者
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