本当にパン屋? ギャラリーのような「パッション5」(下)

 現在、売り場は1階だけで、3‐5階はSPCの事務所。地下1階には今年中にレストランとワインバーをオープンする予定だ。平日は300人から400人、週末には400人から500人の顧客が訪れる。予想以上にたくさんの顧客が集まり、パンの値段もかなり高いとはいえ、収支が合うというわけではない。投資費用を上回る利益が出る日は遠い。立地条件も理想的ではない。ソウル市竜山区漢南洞梨泰院路の端。地下鉄6号線漢江津駅の隣だ。サムスン・リウム美術館に行く道の向かい側にあり、人通りは少ない。ソウル市内でも清潭洞や新沙駅、明洞程度の流動人口のある地域でなければ、これだけの規模の店を運営するのは難しい。

 店長のイ・ソンジョンさんは「わが社の場合、『パリ・ベーカリー』から『パリ・クロワッサン・カフェ』、『パリ・クロワッサン・キッチン』へと発展しましたが、消費者はそれにももう飽きてきたようです。常に新しいものを求める消費者の欲求を満たすため、デザートにターゲットを合わせることにしました」と話す。

 SPC広報チームのチョン・ドクス次長の説明を聞くと、「パッション5」がどうしてこのような「大赤字」の経営をしているかが分かる。「売り上げはむしろ付随的なもので、“最高の製品とはこういうものだ”ということを見せるための売り場です」。黒字を出すことは事実上不可能だということを知りながらも売り場を出すためには、オーナーまたは最高経営者(CEO)の決断が必要だった。チョン次長は「許英寅会長はトレンドをリードしなければならないという考えが誰よりも強い方で、パッション5はそういう会長の意志によって作られた店」と話す。

 いくら最新の店であっても、清潭洞では1年以上持ちこたえるのが難しい。それだけ韓国の消費者は気が変わりやすく飽きやすい。次々に新しいケーキやチョコレート、パンを最高の水準で作り出すことができなければ、時代の先端を行く店として生き残るのは難しい。製菓業界の高級ブランドを目指す「シャニー」の夢を実現させたパッション5。その実験が成功するかどうかは、1年ほど経てば明らかになるだろう。スタートは順調だ。

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