本当にパン屋? ギャラリーのような「パッション5」(上)

 黒いガラス張りのビルには看板も飾りもない。パンやケーキを売っている店という「ヒント」は、ビルの入り口の右側に立てられた看板一つだけ。ビルの正面中央にある穴のような入り口をくぐると、蓮の花の形をした広場が現れる。このビルは正方形の中央を花の形でくり貫いたような形をしている。ゴヤールのバッグを持った30代前半の女性たちがガラスのショーウィンドウを覗く様子は、まるでギャラリーで美術作品を鑑賞しているようだ。

 ここは「デザート・ギャラリー」を目標とする「パッション5」。簡単に言えばパン屋だ。この「デザート・ギャラリー」のオーナーはパリバゲット、パリクロワッサン、シャニー、サムリプ食品など、さまざまな製菓・製パンブランドを手掛けるSPCグループ(許英寅〈ホ・ヨンイン〉会長)だ。

 しかしこのビルをただの「パン屋」と考えるのは難しい。まずはその圧倒されるようなインテリア。売り場の広さは660平方メートルだが、実際に使用している空間は330平方メートル程度。この場所にあった文化空間「Rotunda」をイタリアの建築家マルコ・ルッチの設計により2年かけてリフォームし、昨年10月にオープンした。施設やインテリアは当然最高水準。カフェのイスはヴェルナー・パントン、照明やインテリアもデザイン史に残る有名なデザイナーの作品ばかりだ。スタッフは51人で、このうちパンやケーキを作るシェフは36人。同じ規模のパン屋より3‐4倍多い。SPCグループ内で優秀な人材ばかりを集めたという。

 材料も最高級のものばかりを使用している。例えばバター。「バターは含まれている脂肪の量によって関税が違ってきます。脂肪含量が79%以下であれば8%、80%以上であれば90%の関税を支払わなければなりません。普通のベーカリーでは関税8%のバターを使いますが、ここではバターの脂肪含量がほとんど100%のものを使っています。だから同じパンを焼いても風味がまったく違うのです」

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