知る人ぞ知る全州韓定食の名店


 食事は旅に欠かせない楽しみの一つだが、普通は旅行地を先に決め、次にその地の美味しい店を探すことが多い。しかし最近は食べることを目的とし旅に出る人も増えている。そんなグルメ旅行、特に日帰りのグルメ旅にぴったりなのが全州だ。

 ソウルから全州までは200キロ。2時間もかからない程度の距離だ。休日の朝早く出発したら、まずは豆もやしクッパで腹ごしらえ。韓屋村などを回って散歩した後、昼にはビビンバ、夜には韓定食やご飯とスープがセットになったペッパンなど、1日中美味しい料理に舌鼓を打つことができる。また、川魚の石焼なべ料理「オモガリタン」、マッコリ(どぶろく)を注文する度につまみが出てくる「マッコリ通り」、独特なつまみにビールを売る「カメク」、石焼ビビンバ、麺類など…。安くて美味しい全州料理をすべて食べ尽くすには、2泊3日でも足りないほど。

 全州料理の名店としてメディアなどで取り上げられたことはないが、地元の人々に有名な店がある。その隠れた名店「マンソン韓定食」は、「全州3大韓定食」の店には入らないが、地元の人々はこの店を1番に挙げる。形だけの料理は1品もなく、心のこもった美味しい料理ばかりが食膳を埋める。見かけは華やかではないが、一品一品味わうたび、その美味しさに「うんうん」と頷くはずだ。

 4人分(12万ウォン=約1万3000円)を注文したところ、メイン料理やチゲなどが15種、突き出しのおかずが15種並んだ。トンチミ(水キムチ)の汁をスプーンで一口飲んでみると、思わず納得させられる。キムチ冷蔵庫で熟成させたり、炭酸飲料を入れて急いで醗酵させたのではなく、つぼの中で自然に醗酵した味がする。

 生肉を薬味で味付けしたユッケもちょうどいい味加減だ。石焼なべにたっぷり盛られたカルビチム(カルビを甘辛く煮たもの)は甘すぎず、家庭で作ったような控えめな味。神仙炉(肉、魚、野菜を煮込んだ料理。宮廷料理の一種)のスープもきれいに澄んでいる。

 このほか、細かく切った生きたままのテナガダコ、アワビの刺し身、トリガイの刺し身、生牡蠣、サザエの和え物、テナガダコ炒め、カニの醤油漬け、蒸しガンギエイ、焼きツルニンジンなど、どの料理にもすべて真心が感じられる。例えば濃い緑色のカワニナのスープ。国産の中でも質のよいカワニナを使わなければ、このような濃い緑色は出ないという。土の匂いのする川エビのスープ、タラのスープ、塩で味付けしただけの豆もやしの冷製スープも美味しくさっぱりしている。

 突き出しのおかずの中では牡蠣の塩辛が人気。牡蠣をつぼの中で塩漬けにし、涼しいところで3‐4年保管した黒い塩辛。牡蠣の香りだけが残り、食欲をそそる。 牡蠣のほか、生のイシモチを約2年間塩漬けにし、赤く色づいた塩辛も珍味。この日食卓に並んだものは1年しか経っていないため、まだイシモチの形が残っていた。塩辛くて香ばしくご飯が進む。

 ご飯と一緒に清麹醤(チョングッチャン、蒸した大豆を発酵させた味噌の一種)、シレギ(干した大根の葉)の味噌汁、シレギのチジミが出てきた。シレギを韓国味噌で揉み、煮干を入れて弱火で煮込んだコクのある味。

 食膳が運ばれてきた瞬間からお腹が一杯になるまで、「これこそまさに食べる幸せだ」と思えるはず。

 チョン・カプスンさん(59)は韓定食の名家「ペッポンジプ」で20年間働いた後、この店を出した。今年で13年になるという。毎朝南部市場で仕入れてきた新鮮な食材で、家族の食卓を整えるように作る。そのため遅くとも前日までに予約しなければならない。4人基準で12万ウォン、14万ウォン(約1万6000円)、16万ウォン(約1万8000円)のコースがある。ランチタイムに訪れた二人連れの客には量を少し減らした10万ウォン(約1万1000円)のコースもある。八つのテーブルが並ぶ大部屋など、個室は五つ。韓服姿の従業員が横で食事の世話をしてくれるが、むしろ不便に感じる人もいるかもしれない。

 全州インターチェンジから八達路に沿ってソウルに向かう途中、高速バスターミナルの方向に右折した後、西側にある川沿いの道を15分ほど南下、タガ橋で左折し、右手にある「全州チャイナタウン」の門をくぐると、右側最初の通りにある。15台駐車可。旧正月と旧盆には各々4日間休業。

オ・テジン記者
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