「これほどとは思わなかった。」
トップ女優二人を前面に押し出した映画2本を見た観客たちの反応だ。12日に公開したキム・テヒ主演映画『けんか』の観客動員数は32万9000人、19日公開のハン・イェスル主演映画『用意周到ミス・シン』は26万9000人にとどまっている。キム・テヒもハン・イェスルもプロモーションに積極的で、テレビに出るたびにさまざまな話題を提供していた。にもかかわらず、興行成績は予想を下回った。こうした中、「キム・テヒの限界」「ハン・イェスルのイメージがワンパターン」など否定的な見方が聞こえてくる。
しかし、果たしてこの二人だけのせいなのだろうか。
『けんか』について見てみよう。試写会直後は、「キム・テヒの演技力は前より上がった」と評価されていたが、それは実は「リップサービス(お世辞)」に近かった。むしろ聞き取りにくいセリフ回しで、一部の観客からは「字幕をつけろ」と言われたほどだった。これだけを見ると、確かに「全部キム・テヒのせいだ」と言えるだろう。
ところが『けんか』の根本的な問題は別にある。一体どうして男女二人がこれほど激しくけんかしなければならないのか、観客のハートを一気に掴むような、いや、観客をある程度納得させるだけの理由がこの映画ではどこにも説明されていない。その上、試写会後の過剰な間接広告(PPL)で批判された牛乳のシーンは映画公開時にすべて「編集」(=削除)されるという事態にまで発展した。それはそれでユーモアのあるシーンだったにもかかわらずだ。一方、相手役のソル・ギョングにはロマンチックなムードが欠けていた。けんかのシーンではアクション映画『公共の敵』のカン・チョルジュンを思い起こすほどだった。
ハン・イェスルはもっと悔しがっているだろう。ドラマでヒットした「生意気だけどかわいい」キャラクターをもう一度それらしく演じたものの、ドラマのようにファンの熱狂的な反響は全く見られなかった。
ハン・イェスル一人が光っていただけで、相手役には光るものがなかった。1982年生まれのハン・イェスルに「せんぱ~い、せんぱ~い」と甘える80年生まれのソン・ホヨンは「ご愛嬌(あいきょう)」としよう。だが、顔でも仕事でも「イケてる」ハン・イェスルが万年浪人生に夢中になるという設定もリアルさに欠ける。いくら「検事の夫」を期待しているとはいえ、ハン・イェスルのクラスなら現職検事でも「釣り上げられ」そうだからだ。それに女性の「ファンタジーロマン」を刺激するためか、ロマンチックコメディーの王道「イケメンの王子様」というキャラクターは登場しなかった。彼らは「用意周到」だったのかも知れないが、観客たちはすっと財布を出す「用意」がなかったようだ。
映画はギャンブルだ。「大ヒット」と「大ハズレ」は誰にとっても予想が難しい。賭博場の「いかさま師」たちはたった1枚のカードで勝負の流れを変えるというが、映画というギャンブルではたった1枚のカードで勝利を確信することはできない。それがトップ女優だとしてもだ。その勝負で、演出・脚本・撮影・小物まで、どれ一つとってもそのまま捨てるようなカードはないということを、彼女たちの失敗は物語っている。