2005年、韓国で物議を醸し、法廷闘争にまで持ち込まれた問題作『ユゴ~大統領有故』が日本で世界初の無修正完全版で公開されることになり、イム・サンス監督とシン・チョルプロデューサーが6日、緊急訪日。記者会見を行った。
この映画は1979年10月26日のパク・チョンヒ大統領暗殺事件を基にしたフィクション。
しかし韓国では、最終的には遺族から名誉毀損との訴訟を起こされたことにより、大統領の葬儀シーンなど3分50秒がカットされて上映されたという経緯がある。
イム監督は「作品がカットされるということは、胸が痛む思いだったので、完全版が公開されてうれしい気持ちでいっぱい」と喜びを表した。
まだ民主化に至っていなかった韓国では、この事件は多くの謎にメスを入れることができないままタブー視されてきたもの。そこに果敢に挑んだのがイム監督だった。
「この事件の公式の裁判記録があるのだが、これは当時の政権下で行われたものであり、現在この内容を誰も信じてはいない。自分はリサーチを重ね、この映画が当時の本当の状況に近いと思っている。従って登場人物は実在の人だが、キャラは自分の想像で作り上げたもので、楽しんでもらえたらいいと思う」と述べた。
シンプロデューサーは「この映画については、企画をイム監督に聞いた瞬間に、すぐ契約をしなければならない、と思った。この映画で、勇気を持つということを知った。監督に感謝している。訴訟によりカット公開を余儀なくされたが、このカットに関しては監督には未だに許可をいただいていない」と語った。
ハン・ソッキュのキャスティングに関してイム監督は「彼は多くの映画に出ているが、これほど出番が少ない映画には出たのは初めてだと思う。当時、彼はスランプ気味だったのだが、この映画で完全に復活を果たした。思ったとおりに動いてくれる俳優」と評した。
また「『ユゴ~大統領有故』は政治的なことにばかり焦点が当てられがちだが、純粋によい作品。パク大統領をひぼうする映画ではない。遺族の方々はこの映画を見ていないと思うが、(次々期大統領候補とも言われる)パク・クネさん(パク大統領の長女)にも先入観なく見てもらいたい」と語った。
韓国で騒動が持ち上がった当時はSPが24時間警護に当たるといった危険にもさらされたイム監督だが、その姿には多くの困難を物ともしない作品への自信とプライドがにじみ出ていた。
『ユゴ~大統領有故』は15日から東京・シネマート六本木ほか全国で公開。
東京=野崎友子通信員