【インタビュー】イム・スジョン「20代初めに“本当の恋愛”体験」


 少女のようだった彼女が女になった。ホ・ジノ監督4作目の長編映画『幸福』(10月3日公開)でヒロイン・ウンヒ役を演じたイム・スジョンのことだ。ウンヒは重い肺の病気を8年間も患っている女性で、肝硬変のため療養院「希望の家」にやって来た、女にだらしのないヨンス(ファン・ジョンミン)にすべて捧げるが、結局捨てられるヒロインを見事に演じた。

 映画での化粧気のない顔、年寄りがはくようなズボン姿でさえ美しかった彼女に18日、ソウル市江南区清潭洞で会った。レースのミニスカートに紺のタイツと赤い靴というファッション。「普段はこんなレースなんて絶対に着ません。ボーイッシュなスタイルのほうが好きです」と手を振って否定した。少しハスキーな「フフフ」という笑い声を聞けば、今日のファッションが確実に「撮影用」だと分かる。

―ファン・ジョンミンさんと撮影したポスターは「援助交際」のようなムードが漂っていた。幼さが残るあなたの顔は、演技の幅を狭める可能性もあるが?

「映画のヨンスとウンヒは年齢差が7~8歳という設定。演じているうちに自然に水が流れるように感情移入できると感じました。映画を見終えれば、そんな心配はなくなるはずでしょう」

―ウンヒのような女性が本当にこの世の中にいる?と思うが。

「実際のわたしもウンヒよりは(クールで現代的なヨンスの元彼女)スヨン(コン・ヒョジン)のほうに似ています。だから初めて台本を読んだときは、彼女のすべてを理解することができませんでした。ウンヒは古典的な“女性”性を最大限に膨らませた人物。小説で映画化もされた『離れの客とお母さん』(1961)の母親のような…。でもよく考えてみると、女性は母性愛が基本ではないでしょうか」

―でもウンヒが愛情表現に積極的だから、一昔前の芝居のようなイメージは薄らいでいる。

「ウンヒは猫をかぶるようなことや、心理戦、計算高さなどが全くない女性。好きになったら“一緒に暮らそう!”と先にプロポーズできるんです。これほどまでに自分の気持ちに正直でいられるのは、いつ死んでもおかしくない病を抱えているから。1日1日が“幸福”に生きられればいい…そんなところは、わたしもウンヒに似ています。あそこまでおおらかではないにしても、好意を持ったり、好きな男性がいたりしたら素直に気持ちを告白します」

―「本当の恋愛」をしたことは?

「20代初めに“本当の恋愛”をしました。映画の中のヨンスが、テーマパークのアトラクションに乗ったまま、“おかしくなりそうだ!”と叫んだとき、自然と涙が出てきました。台本にはただ“見つめる”と書いてありました。監督が“泣かないシーンも撮っておこう”とおっしゃったのですが、後で“泣かなかったら大変なことになるところだった”と…。フフフ。一方的に捨てたり、捨てられたりしたことがないからか、去っていくヨンスにウンヒが祈るようにしてすがりつくシーンは演じるのが難しかったです。映画が終わってみると、一度結婚したのにまた実家に戻ってきたような気持ちがしています」

―イム・スジョンさん自身の実際の性格は?

「2001年にドラマ『学校4』(KBS)で正式にデビューする前、3年くらい新人の時代がありましたが、オーディションだけで数百回受けました。内気で閉鎖的だったけど、いろいろな役を演じてみて、とても変わりました。映画『角砂糖』(06)のシウン役のようにりりしい少年のような面、『サイボーグでも大丈夫』(06)のヨングン役のように“4次元の世界”に生きている面、『箪笥(たんす)』(03)のスミ役のように閉鎖的で壊れそうなもろい面など、全部わたしにあるものです。それらと一緒にこれからも生きていくでしょう。どの面も捨てたくありません。これでは多重人格になってしまうかも?フフフ」

―今までで一番愛着がある役は?

「愛着があるのは『箪笥(たんす)』のスミ役。ターニングポイントになりました。“演技は面白い”と初めて感じたのは『サイボーグでも大丈夫』のヨングン役です。あの誰も触れることのできないキャラクター、他の人が演じない役、創造することの喜び…のようなものがあり、自由とカタルシスを感じました。それに比べ『幸福』のウンヒ役は“枠”がある。ヨングンを演じてすぐウンヒを演じたので、はじめはイライラしました」

―女優としての目標は?

「現実に近い人物を演じてみたいです。それに、とても強い女性。キャリアウーマンや、時代劇なら武術の達人、悪女のような役。そしてこれは欲ですが、40歳前に誰もが一番といってくれるような作品を1本、演じてみたい」

―30代まであと数年。世の女優たちはそのころ悩むそうだが?

「昨日、試写を見ながら“ああ、この映画(『幸福』)までがわたしの女優人生の第1幕だ”と感じました。第2幕を上げるため準備しなければ。第2幕が何になるか分からないし、その幕をどのように上げるべきかも見当がついていませんが…」

崔宝允(チェ・ボユン)記者
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