「伽倻琴は弦が12本で、日本の琴よりも1本少ないのが特徴です。奈良県・正倉院の新羅時代の伽倻琴と同じで、材料には桐と絹糸が使われています」。7月28日午後6時、全羅北道全州市豊南洞の韓屋村内の宿泊施設「雅世軒」。涼しい風が開け放たれた門から流れ込み、庭に座った宿泊客の汗を乾かす。この日、14人の宿泊客は全員日本人。この宿泊施設のパク・ユンヒ代表(34)が涼しげな廊下で伽倻琴の旋律に合わせソリ(韓国の伝統音楽のひとつ)を歌う。
パク代表が太鼓を叩きながら「興甫歌」のなかの「 花草欌打令」を歌った。パク代表は宿泊客たちに「ソリはみんなが一緒に楽しむもの」とし、合いの手を求めた。観光客14人はパク代表が歌の合間、太鼓のばちを高く持ち上がるたび、「オルシグ!」という合いの手を入れた。
埼玉県から来たという加藤良明さんは「伽倻琴は琴の音色より強く優しい。観客とひとつになった公演が楽しかった。韓屋の部屋に宿泊しながら、韓国の伝統料理に音楽まで楽しむことができた。韓国は7回目だが、初めての経験」と話した。
全州韓屋村の中に韓国伝統の生活をテーマにした宿泊施設が増えている。5年前に韓屋村が誕生してから、少しずつ宿泊施設が増えてきたが、今年は5月以降に3カ所がオープンし、計8カ所になった。これらの施設は韓屋村の中の700軒の韓屋と、村の中の朝鮮時代の遺産、韓国料理、酒、国楽、工芸、韓方(中国から伝わり韓国で発達した医術)、礼節などの韓国伝統体験施設を供給しながら、それぞれのテーマで韓国人や外国人の観光客を迎えている。
韓屋村の宿泊施設の客室は計45室。2~15人ずつ130人まで収容できる。冷房施設の整ったオンドルの部屋は韓国伝統のインテリアで飾られており、ほとんどの部屋にシャワー、トイレが付いているが、昔通り、トイレを外に配置しているところもある。
朝にはナムルなど10~15種のおかずとスープが並ぶ韓国の家庭料理が用意される。1泊2日ですべての体験イベントまで含め、計2人1室6~10万ウォン(7600~1万2000円)、4人1室10~15万ウォン。週末は込み合うので予約が必要。
全州市は毎晩、村の文化遺産と体験施設を照明で明るく照らしている。韓屋村の中央道路はテーマ観光路で、看板も整備されている。イ・カンアン全州市伝統局長は「朝鮮朝の発祥地として、韓屋、韓紙、韓国料理、ソリなどをひとつにまとめ、伝統文化の中心都市として育てる事業計画を立てた。一部の施設は今年中に工事を開始する」と話した。