ここにある若者がいる。観客1230万人を動員し、韓国映画史上で興行2位を記録した映画『王の男』でスターになった。そして次々にテレビ・CM・プロモーションビデオで活躍するようになった彼は、その年の終わりに数々の映画賞を受賞、一躍、新世代のシンボル的な存在になった。
だが、ほとんどの出演作品で彼が見せた「美しい男」のイメージは「俳優として多彩な方向性を広げるのに差し支えがある」と言われ、「まかり間違えばマンネリになるのでは」との声も聞かれた。懸念の声は噂を呼び、噂は虚像を生んだ。しかしその若い俳優は黙々と仕事に臨み、ついに彼は観客の元に帰ってきた。
俳優イ・ジュンギ(26)は2つの作品を通じ、これまでとは全く違う姿を見せようと努力した。まず、ドラマ『犬とオオカミの時間』は本格的なハードボイルド。「夕暮れ時、あらゆる物が赤く染まるころ、あの丘の向こうからやって来るシルエットが自分の飼い犬なのか、それとも自分を狙うオオカミなのか見分けられない時間帯」という意味のタイトルが物語るとおり、敵と味方が交錯するスパイの物語だ。このドラマでイ・ジュンギは、母親を殺した男に復讐心を抱く国家情報院の職員、イ・スヒョンを演じる。
今月26日公開の映画『華麗なる休暇』は、1980年5月18日に起きた光州民主化運動(光州事件)を忠実に再現したと評価され、試写会を中心に口コミで評判が広がっている。この作品でイ・ジュンギが演じるのは、タクシー運転手ミヌ(キム・サンギョン)の弟ジヌ。デモに参加することになる高校生を熱演した。
俳優という職業柄、「別の姿」という言葉自体に語弊があるが、中性的なイメージで観客を熱狂させた俳優の変身は、いろいろなことを想像させる。初めて会いあいさつした時に出迎えたその独特の笑顔と、「型にはまりたくない」と凛々(りり)しく語った俳優イ・ジュンギの姿が記憶に残る。約40分のインタビューは、彼の仕事への情熱、俳優としてのジェラシー、そして彼の人間的な面を感じることができた楽しい時間だった。インタビューは、雨が降る京畿道華城のドラマ撮影現場で行われた。