8.6%(『青い魚』)、10.4%(『愛に狂う』)、13.5%(『ムンヒ』)…。昔も今も韓国のテレビ番組で最も人気があるのは「ドラマ」だが、最近ではこれらの視聴率はかなり低い。意外なのは、5-9年ぶりのドラマ復帰で各マスコミの取材が殺到していたスター女優たちが連日熱演を見せているにも関わらず、視聴率が低迷していることだ。コ・ソヨン、イ・ミヨン、カン・スヨンらがそうだ。インターネット上の視聴者掲示板を見てみると、彼女たちの演技を批判する書き込みよりも「好感を持っている」という声が多く、熱烈なファンもかなりいる。にもかかわらず視聴率という「数字が示す真実」は過酷だ。それは一体何故なのだろうか。
1.スターはいるがストーリー性がない
3-4年前までは「特Aクラスのスターさえ出せば、第4話くらいまでは視聴率20%前後を取れる」というのがテレビドラマ界の定説だった。しかし、最近の視聴者は冷たい。魅力的な構成・セリフ・ストーリー性がなければ、すぐにチャンネルを変えてしまう。第1話の勝負で「注目集め」に失敗したドラマは直ちに10%以下に転落する。スターを見るためだけに退屈なドラマを見続ける視聴者はほとんどいないというわけだ。今やインターネット上のさまざまな娯楽番組で、芸能人宅のバスルームにある「垢すりスポンジ」までありのままに公開される時代だ。そんな時代のスターにもはや神秘性など存在しない。10-20代に人気のスターを前面に押し出したSE7ENの『宮S』や エリックの『ケセラセラ』さえ苦戦しているのが現実だ。『青い魚』『愛に狂う』(今月1日終了)は「反戦」や「ミステリー」という形を装ってはいるものの、ヒロインの清純さが売りの典型的な恋愛物だ。『ムンヒ』もすべてがカン・スヨンにかかっている。『白い巨塔』の脚本を手がけたイ・ギウォン氏は「韓国人は基本的にストーリー性でドラマを見るので、スターのイメージを前面に押し出したドラマは今後ますますヒットしにくくなる。つまり、脚本の完成度や個性がカギを握っているのだ」と説明する。
2.1980年代のままの「魅力的な女性」に主婦層がそっぽ
カン・スヨン、イ・ミヨン、コ・ソヨンらのドラマが放映される時間帯は週末の午後8時から10時台。視聴率調査会社のAGBニールセンメディアリサーチによると、週末午後8時から11時までの主な視聴者層は主婦だ。30代以上の女性視聴者が40%を占め、他の年齢層や性別の視聴者を圧倒している。しかし、カン・スヨン、コ・ソヨン、イ・ミヨンの役柄は1990年代の「かっこいい」男性に愛される「魅力的な女性」のままだ。彼女たちからは「生活のにおい」がしない。今や30代半ばを越えた彼女たちは、キム・ヒエ(『父母様前上書』)、チェ・ジンシル(『バラ色の人生』)らが「キョーレツなオバサン」を演じ新たな時代を切り開いたことを思い出す必要がある。主婦の共感を引き出すキャラクターこそ、テレビドラマで彼女たちの生命力を発揮するのだ。
3.「ギャラとドラマ完成度」の関係は?
ある外注制作会社の幹部は「最近映画界からドラマに復帰した特Aクラスのスターの出演料は、1話当たり2000万ウォン(約256万円)を超える」と話す。問題は限られた制作費のうち、これほど多くの金額が俳優の出演料に当てられ、ドラマ全体の完成度が落ちるということだ。
この幹部は「人気女優と人気脚本家を1つのドラマに投入するのが難しい理由はここにある」と打ち明けた。一部の外注制作会社は「特Aクラスの女優をキャスティングした」と大々的に売り込んで全国ネットのテレビ局の放送枠を狙うが、ふたを開けてみると脚本に視聴者をひきつける力がなく、結局はそっぽを向かれる結果となることもある。
一方、ドラマの完成度という点では、ハリウッド大作映画を彷彿とさせる米国のドラマや、ストーリー展開と専門性に長けた日本のドラマに慣れた視聴者から、ますます厳しい審判を受けている。韓国放送映像産業振興院のウン・ヘジョン責任研究員は「豪華でしっかりした構成の米ドラマに比べ、息の長い韓国ドラマはますます若い世代の関心を呼びにくくなっている。インターネットやニューメディアの普及で視聴パターンが大きく変わりつつある今、テレビ局やドラマ制作会社は巨額を投じてスターをキャスティングし、難局を打開しようとしているが、そう簡単にはいかない状況だ」と話している。