イ・ビョンホン、映画『夏物語』について語る


 イ・ビョンホンの目には特別な魅力が隠れている。優しそうで、いつもキラキラと濡れており、まるで母を見失った子牛のように悲しげでもある瞳は、相手の武装をいとも簡単に解いてしまう。

 イ・ビョンホンが『甘い人生』でやくざを演じながらも優しそうでどこか悲しそうに見えたのは、その瞳の力が大きい。

 イ・ビョンホンがラブストーリーに戻ってきた。前作『甘い人生』では血を流したが、今回の作品では涙を流す。『私の心のオルガン』、『バンジージャンプする』で純粋でありながら激しい恋を演じたイ・ビョンホンが、30日に公開される映画『夏物語』では切ない昔の恋を演じている。

-映画『甘い人生』とは180度イメージの違う『夏物語』を選んだ理由は?

 「そのような質問をよく受ける。もっと強い男を演じた方がいいのではないかという人もいれば、良い選択だったと言ってくれる人もいる。しかし僕自身は『次はこういう役が演じたい』という青写真を描く性格ではない。シナリオを読んで感性を刺激された作品に出演している」

-『夏物語』は老教授が20歳のころの初恋を思い起こす映画だ。20代と60代を同時に演じるのは難しくなかったか。

 「自分の年齢が中途半端だと感じた。自分の年齢自体のことではなく、20代と60代を演じるには中途半端だという意味で。映画を見た人はイ・ビョンホンが60代として登場すれば特殊メイクをしたのかなどと言うはず。そのような部分で色々悩んだ」

 -映画『バンジージャンプする』や『私の心のオルガン』など、イ・ビョンホンがこれまで演じてきたラブストーリーの映画と今回の映画は情緒的に似ているのではないかという評価もあるが。

 「最初に『夏物語』のシナリオを読んだとき、時代的には『私の心のオルガン』と似ているし、純愛物語という点では『バンジージャンプする』を連想させるとは思った。しかし情緒的には『夏物語』とこれらの作品はまったく違う」


-代表的な韓流スターでありながら、作品の選択に「韓流」を考慮しないように思えるが。

 「韓流ブームに乗って企画をしていると、最初はヒットするが、後になって見ると作品自体が軽く感じられる場合もある。数年後にこれまでの出演作を振り返ったとき、恥ずかしくなるような歩みは残したくないと思っている。もちろん、今でなければできないような作品に甘い誘惑を感じることもある。しかし長い目で見て良い作品を選びたい。中には『夏物語』が日本受けを狙ったものではないかという人もいる。それならば『甘い人生』もラブストーリーだったのだし、今後はラブストーリーを演じることができないということになってしまう」

-相手役スエとの相性はどうだったか?

 「スエはとても内向的な女性ではあるが、独特な女優だと思う。これまでこういうタイプの女優と会ったことがなかったので、最初は不思議な感じがした。撮影現場で6カ月間、1日3食をすべて車の中で食べていた。ある時は現場で7時間待機しなければならないことがあったが、1度も車の中から出てこなかった。それなのに山登りやスポーツなど体を動かすことは好きなようで、いつも楽しそうにやっていた。普通の人よりもはるかに内気な女性だ。それなのにカメラの前に立つと豹変する。まるでエネルギーが外に出てしまわないよう、ためておいた後、カメラの前で一気に爆発させているかのようだった」

-いつからかあまりメディアに顔を出さないようになったようだが。

 「1人の俳優を好きになると、その俳優の本当の姿が知りたくなるものだ。しかしそうしているうちに、その俳優の次の作品に対する期待が弱くなっていくような気がする。実際とは違う姿で登場したのに、『あんな人じゃないのに』と言われることもある。だから本当に良い作品でファンの前に姿を現すのが正しいと思う」

-俳優だけでなく監督や制作にも関心があるようだが。

 「僕の中にそのような部分があるのは事実。1つだけに集中するよりも、自由に未来を開けておきたい。ドキュメンタリーの制作にも興味がある。いつかは自分で映画を作るのが夢だというユ・ジテに『先輩、映画を作ってください。先輩が作った映画を見てみたい』と言われたことがある。軽い気持ちで言った言葉かもしれないが、こんな風に考えてくれる人がいるのはうれしい。でもまだ具体的に構想を練ったわけでもなく、いつになるかはわからない」

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