現実の『私の頭の中の消しゴム』に視聴者は涙、涙


 もし愛する家族がそばにいながらも、誰なのか分からなくなってしまったら…。

 2004年11月に公開されたチョン・ウソン&ソン・イェジン主演の映画『私の頭の中の消しゴム』はアルツハイマーを題材にした恋愛物語だった。若年性アルツハイマーにかかり記憶を徐々に失っていく20代の若くて美しい妻ソン・イェジンと、妻の記憶をなくさないよう必死に頑張る夫チョン・ウソンの愛の物語を描き、多くの観客の涙を誘った。

 『私の頭の中の消しゴム』のようなことは映画だけでなく、現実にも存在している。23日からKBS第2テレビで放送されている全5部のドキュメンタリー番組『人間劇場-愛して、忘れないで』がそれだ。今年36歳のキム・ナヨンさんは3年前に突然倒れ、若年性認知症という診断を受けた。

 普通の家庭の主婦で、2人の娘の母親として暮らしていたキム・ナヨンさんは、その瞬間から1人では何もできない子供になってしまった。自分の名前はもちろん、物の名前もはっきり憶えていない。

 しかし記憶を失ってしまった彼女のそばには大切な家族がいた。若い妻が若年性認知症の診断を受け、この世の終わりを感じ、胸が張り裂けるような思いをした夫のオ・チャンソクさん。妻の具合が悪くなるまでの結婚生活5年間は、数十年の歳月とも変えがたいほどまぶしく輝き、美しく、幸せな時間だった。だから彼には妻をあきらめることができない。


 6歳になった2番目の娘ヘリンちゃんはお母さんに薬を飲ませ、1日に何回も「大好き」とささやき、キムさんを抱きしめる。ヘリンちゃんは夫のそばで眠れないキムさんのため、隣で一緒に寝てあげる心優しい「小さなママ」だ。

 24日の放送で夫のオさんは熱い涙を流し続けた。自分自身が誰なのかさえ分からない妻に、してあげられることは何もないという現実に、とても胸が痛むという。以前はオさんが近くにいないと、すぐに電話をかけてきたというキムさんだったが、今はもう夫がそばにいないことさえ認識できない。

 キムさんの姑の告白も視聴者の涙を誘った。キムさんの代わりにキムチを漬けた姑は「今まで、一度も怒ったことのない優しい嫁だったのにこんなことになるなんて、あまりにも胸が痛む」と目を赤くした。

 こうしたキムさんの現状に視聴者はショックを受け、大粒の涙を流した。現在、同番組のネット掲示板には激励の書き込みが相次いでいる。ほとんどの視聴者たちが「涙なしには見られない話だ」「家族の愛で必ず奇跡が起きてほしい」と書き込んでいる。

 激励以外にも「認知症という病気が家族にどれほど大きな痛みをもたらすのか、考え直すきっかけになった」「健康な家族に感謝する」といった書き込みもある。

 視聴率調査会社TNSメディアコリアによると、同番組の24日の全国視聴率は14.7%だった。

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