モデルのようにピンと背筋を伸ばして歩く姿には威厳すら感じる。撮影現場では食いしん坊と呼ばれているというが、ぜい肉ひとつない。
実際、これまでこの女優を見るたび、どこか「残念」という思いが心をよぎった。美しく整った顔立ちに、知性まで合わせ持った完璧なイメージのために、女優というよりはCMモデルとしてのイメージが強かった。活発なおてんば娘、アクション、悪役まですべてこなしてきたが、演技の幅は広くないという指摘を受けてきた。実際、「演技」をしている様子よりも、大きな瞳でじっと何かを見つめている顔のアップが思い浮かぶ。
しかしこれまでそのような役割が、キム・テヒに似合わない「服」であったのかもしれない。12月21日公開予定のアクションファンタジー映画『中天』でスクリーンデビューするキム・テヒは、この作品に対し「ソファは私のためにあるような役」と浮き立っている。初めての映画であるためプレッシャーも感じたが、撮影の間中、幸せな気分で満ち、辛さも感じないという。同映画は仏教の四十九日に着眼した想像の世界の物語。映画『ビート』『MUSA-武士-』で助監督を務めたチョ・ドンオ監督のスクリーンデビュー作だ。
この映画でキム・テヒは、現世ではチョン・ウソン(イ・クァク役)の恋人ヨンファを演じ、中天ではソファという名を持つ「天人」になる。
「ソファは人間を統治するのではなく、子どものような純粋な心を持ったキャラクターです」
いくら子どものようであってもソファは天上の人間。フワフワした衣装を見ると『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』のような夢幻的なファンタジーを連想してしまう。「私はジョイ・ウォンのように色っぽくないですから…編集されてしまいましたが、服を脱いだチョン・ウソンさんに向かって『心配しないで。天人は性欲を感じないのよ』というセリフもあったんですけど…」。
冷たいほど堂々とした姿のキム・テヒが、いつの間にか子どものようにニッコリ笑った。
完璧主義者のように見えるが、キム・テヒ自身は「のろまで鈍感」だと話す。「周りからそのように見られることは少ないのですが、私は未熟なところだらけの人間です。今では普通だとは思いますが、演技者になる前は、感情が豊かだとか、敏感ではなかったと思います。まだ努力中です」
キム・テヒは“本物の”女優になりたいと話す。典型的な美女タイプの顔に、小さく見える身長のために悩んでいるが、「短所を長所に変えてみせる」と話す。
「女優を自分の仕事に選んだのですから、生涯をかけて努力したいと思っています。演技は私を人間的にも成熟させてくれます」
自分に似合う「服」を探すまで長い時間がかかったかもしれない。キム・テヒは今、ついに自分にぴったりの服を見つけたようだ。