韓国映画に見る「直説話法文化」と「排泄欲求」

 最近の韓国映画はとてもストレートだ。以前はオブラートをかぶせて表現していた汚い言葉も、今ではそのまま速射砲のように飛び出すかと思えば(アニメ『AACHI & SSIPUK』)、終始一貫してハイテンションで克日(打倒日本)と民族主義を露骨に叫んだり(『韓半島』)する。援助交際・同性愛・サド・マゾなど、タブーだった性描写を、高校を舞台に繰り広げたり(『多細胞少女』、8月10日公開)、‘キモいカップル’を目指して男女の高校生が街のど真ん中で押し倒してキスしたり(『愛してるから、大丈夫』、8月17日公開)。婚約者がいる男に「私、おじさんを口説きに来たの」という女(『恋愛の耐えられない軽さ』、9月公開)や、「恋愛はゲーム。俺を一度口説いてみな」という男(『ミスター・ロビンの口説き方』、10月公開)も、露骨なのはみな同じだ。



◆強烈なタイトル 

 映画界のストレートさは映画のタイトルにもはっきり表れている。すでに公開された『女教師の隠れた魅力』『淫乱書生』『甘く、殺伐とした恋人』『生、ナル先生』『殴打誘発者』から、間もなく公開の『礼儀知らずなやつら』『誰が彼女と寝たのか』『愛なんていらない』『イカれた彼女たち』『付き合いの長い恋人を整理する方法』『撃つ』などはすべて、「殺伐」「殴打」「なんて」「イカれた」といった強烈な言葉を使ったり、長いタイトルでテーマを直接説明している。『角砂糖』『微熱』『私たちの幸せな時間』のように、まだまだストレートさを避けたタイトルもあるが、大半は「直説的で刺激的に!」路線だ。(また、)『恋愛の耐えられない軽さ』はもともと『会いたい顔』というタイトルでシナリオが完成していたが、撮影後のマーケティング戦略でタイトルが変更になったケースだ。この映画の広報を担当しているエイエムシネマのチーム長ハン・ジソン氏は「当初のタイトルはとても古い感じがして、‘恋愛’を前面に出して話題にしたほうがいいと判断した」という。


◆競争激化で観客の好みも変化 

 ショーボックスのキム・テソン広報部長は「最近企画しているシナリオのうち、7割は刺激的で直説的な映画だ」という。このようにタイトルからキャラクター、ストーリーまで、韓国映画がどんどん極端でストレートになる原因はさまざまだ。

 まず、韓国映画の制作本数が増えたことによる過熱競争が挙げられる。MKピクチャーズのユ・セウン・マーケティングチーム長は「今年制作される韓国映画は100~150本にのぼる。このような激しい競争の中で他よりも注目を浴びるために、より刺激的でエロチックなタイトルやテーマを選ぶ傾向がある」と話す。

 また、これは観客の好みの変化とも関係がある。テウォン・エンターテインメントのチョン・テウォン代表は「アンケート結果を見ると、“単調で退屈なのは我慢できない”という反応が多い。コメディーなら“私を早く笑わせろ”、ホラーなら“私を早く恐がらせてみろ”という態度で映画を見る。だから採算を考える商業映画としては、より‘強烈に’するしかない」と説明する。チョン代表は「一番人気のあるジャンルはコメディーで、一番危ないジャンルは恋愛もの。このごろ観客にそっぽを向かれがちな恋愛ものは、企画すらしていない」と話した。


◆直説的=韓国文化と同じ? 

 韓国社会全般に広がっている「直説話法文化」と「排泄欲求」が反映されたという分析もある。インターネット文化がその代表だ。インターネットの主なユーザーの年齢層は、映画の主な観客の年齢層(10~30代)と重なる。東国大映画映像学部のチョン・スワン教授は「彼らは直説的言語とルール破壊によりカタルシスを感じている傾向がある。これまでタブー視され、押さえつけられてきたものをさらけ出すことで、たまっていたストレスを一挙に解消しようとする現象のようだ」と説明した。

 ならば、刺激的なタイトルの作品はすべて観客動員に成功したのだろうか? キャラクターやストーリーが極端だといわれている『韓半島』は2週間で観客300万人を突破した。しかし『AACHI & SSIPUK』『殴打誘発者』といった作品は興行的に失敗した。『波浪注意報(日本公開タイトル『僕の、世界の中心は、君だ。』)』『愛を逃す』『国境の南側』『トカゲ』など情緒的な恋愛映画は「ここ最近の傾向どおり」観客動員に失敗した。しかし、去年9月に公開された恋愛映画『ユア・マイ・サンシャイン』は観客300万人を動員する好成績を上げた。よって「扇情性=興行成功」の公式は常に当てはまるものではないということだ。

リュ・ジョンギ記者
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