辛くて赤いだけじゃない!「美しいキムチ」の時代へ


◆キムチの栄養と効能

 キムチにはビタミンAとC、カルシウム、鉄分などの無機質が豊富に含まれている。主な食材が野菜であるため、繊維質が腸の消化酵素の働きを助け、消化・吸収を増進、便秘や大腸がんなども予防する。カロリーも低く、ダイエットにも効果的だ。

 十分に発酵したキムチは腸によい乳酸と乳酸菌が豊富に含まれている。発酵したキムチ1グラムには乳酸菌が1億匹以上含まれており、同じ分量のヨーグルトより最高4倍も多い。乳酸は腸によいだけでなく、抗菌性も持つ。キムチがSARS(重症急性呼吸器症候群)予防の効果があるとしてアジア全域で人気を集めたのもこの乳酸のお陰だといえる。

 漢方ではキムチを陰と陽が調和した完全食品であるとしている。慶熙医療院の漢方リハビリ医学課の申鉉大(シン・ヒョンデ)教授は「冷たい性質を持つ白菜と大根に、熱い性質の唐辛子、ネギ、ニンニク、ショウガを入れることにより、陰陽を調和させた祖先の知恵が生み出した食品」と説明した。また、「唐辛子を使わない白キムチやトンチミは冷たい性質を持つため、体に熱の多い少陽人(四象医学に基づき)に向いており、辛い薬味をたっぷり使った真っ赤な白菜キムチは体が冷たい少陰人に向いている」とした。

◆キムチの過去

 韓国のキムチの歴史は1300年前の三国時代にまでさかのぼる。古代中国の「菹」という野菜の塩漬けが伝わったものであると推定されている。中国の魏志倭人伝には「高麗人は酒、味噌、塩辛などの発酵食品を作るのが上手い」と書かれている。

 キムチが単純な塩漬け食品から今日のような真っ赤なキムチに変身した画期的なきっかけは、17世紀はじめ、唐辛子が韓国に伝わった後から。唐辛子に関する記録は1613年頃の「芝峰類説」に初めて記載されたが、今日のようなキムチに関する記録は1766年の「増補山林経済」に残っている。この後、1850年頃に中身が一杯につまった白菜が伝わり、この時から薬味を白菜の葉の間に挟んで作った真っ赤なキムチが主流となっていった。




◆キムチの現在、そして未来

 一時、臭いという理由で敬遠されたキムチが再び脚光を浴び始めたのが2000年前後。健康に対する関心が高くなり、いわゆる「ウェルビーング(wellbeing)食品」、「スローフード」が注目を浴び始めたため。ちょうどこの頃、韓流がアジア全域に拡散し、韓国料理と共に韓国料理の代表といえるキムチの人気が急上昇し始めた。

 最近、キムチはさっぱりした単純な味に変化しつつある。過去のキムチは食卓を占める比重が高かった。おかずが少なく、食べるものといえばキムチしかなかった貧しい時代には、薬味をたっぷり入れたキムチが主流だった。しかし生活が豊かになり、肉や乳製品を多く摂取するようになるにつれ、キムチはあっさりさっぱりした味付けに変化していった。唐辛子が韓国に伝わってきた以前の味付けに戻ったといえるだろう。

 最近のキムチの新たな流行は「美しいキムチ」。色や形で美しさを追求したキムチだ。目が高く、舌の肥えた若い消費者たち、そしてキムチに興味を持ち始めた外国人を誘惑するためだ。

 ハンソン食品が開発した「皇帝キムチ」は、一見これがキムチかと思われる程の美しさだ。ゴマの葉、ワカメ、ニンジン、朝鮮人参など様々な材料を白菜やキャベツなどに巻き、乳酸発酵させた後、一口大にカットして九折坂(九つの枠のついた重箱に盛られた料理)に盛り付けたもの。大根とキャベツは黄色の色を出すクチナシの実や赤い色を出す百年草で染めてある。キムチの特徴である乳酸発酵はさせるが、発酵の度合いは厳しく調節しているため、キムチ特有のにおいはほとんどない。

 ハンソン食品のキム・スンジャ社長は「いくらキムチが体に良いとはいえ、味やにおいがきつ過ぎては初めてキムチに接する外国人が敬遠する」とし、「しかし本物のキムチの味を知った外国人は、その辛さに汗を流しながらも美味しそうに食べている姿をよく見かける」と笑った。

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