【現地ルポ】イ・ビョンホン、「新しい歴史を作った男」


 「イチ、ニ、サンの次に“キムチ~!”と続けてください。」イ・ビョンホンが、観客席の方へカメラを向けながらこう言った。続けて司会者の「1、2、3」と言う合図に合わせて、4万2千人ものファンたちが一斉に口を揃えて「キムチ~!」と声を張り上げた。

 3日、東京はゴールデンウィークを迎え、いつもの人込みがなく静かな町並みだった。しかし読売ジャイアンツのホームグラウンドでもある東京ドームの周辺だけは様子が違い、昼の12時ごろから続々と中年女性を中心に人だかりができた。日本の全国各地からイ・ビョンホンを一目見ようとファンたちが“東京ドーム”に集結した。

 この日の午後6時から始まったファン・ミーティングの『イ・ビョンホン in TOKYO DOME』は、そのチケット4万2千枚が即時に完売となり大きく話題を呼んだ。友人と一緒に大阪から新幹線でやって来たモリタ(31)さんはイベント開始前に、携帯用ストラップ、Tシャツ、CD等のイ・ビョンホン記念グッズを購入するため、強い陽射しが当たる中、1時間以上も立って並んだという。彼女は「それでも全然構わない」とし、「ドラマ『オールイン運命の愛』を見て“ビョンホンさん”の爽やかな目にたちまち恋に落ち、今回“ビョンホンさん”に少しでも会いたい思いでやって来ました」と答えた。

 昨年の9月、埼玉県でイ・ビョンホンを含めた韓流四天王が参加した「韓流オールスターサミット」には2万5000人が集まった。この“2万5000人”という女性を中心とした韓流ファンのあまりの多さから、日本の男性たちは「女たちはそんなに暇なのか?」と皮肉ったものだった。しかし今回はそれを遥かに上回る“4万2000人”だ。舞台に上がったイ・ビョンホンも「こんな光景は生まれて初めてだ」と驚きの色を隠さなかった。

 今回のファンミーティングは、昨年の11月に日本でイ・ビョンホンの公式ファンクラブが発足した際に企画されたものだった。イ・ビョンホンの所属事務所ファントムは「ファンミーティングをどうせやるんだったら、マイケル・ジャクソンやローリング・ストーンズ、マドンナ等、ビックなスター達が使った東京ドームで“ビッグ”にやってみたいという熱意から作られた」と伝えた。今回のファンミーティングは韓日共同で制作され、日本側は大手広告代理店の博報堂が出資した“博報堂DYメディアパートナーズ”と“テレビ朝日”が制作に加わった。また演出は日本側の提案により、作詞家でステージプロデューサーとして有名な秋元康が手がけた。

 ファンミーティングが行われた3時間、全体の99.9%が女性と推定される4万2000人の観衆は、秩序良くペンライトと大きな拍手でイ・ビョンホンに声援を送った。イ・ビョンホンは白のスーツに白のマイクを握り締め、落ち着いた様子で「畑仕事をする母をよく手伝います。なぜなら家族で男手は僕しかいないから・・・」と静かに自分の話を語り、その様子を幸せそうに聞いているファンの姿が印象的だった。


 この日のイベントは、イ・ビョンホンが一人で特技を見せるだけのステージではなかった。500インチの大型スクリーンでは、イ・ビョンホンが暴漢に襲われ、その格闘の末に銃で撃たれるという映像が映し出されたのだが、その撃たれた瞬間に突如イ・ビョンホンがステージ上から15メートル下に落下し、あまりの突然の出来事に会場が騒然となった。実際は、スタントマンによる演出だったのだが、非常に意表を付いたものだった。しかしイベント全体としては、この他には特にこれといった仕掛けはなく、大下容子アナウンサーの落ち着いた司会ぶりでスムーズに進行されていった。

 またイ・ビョンホンは約40分に渡って、一人でセリフを読みあげる「朗読劇」を披露。これは、35歳の映画俳優が末期の肺がん宣告を受けた後、故郷の江原道束草に帰省するといった内容で、日本語字幕を参照に鑑賞したファンの中には涙ぐむ姿も見られ、イ・ビョンホンの見せる演技に入り込んでいる様子だった。イベントではその他、イ・ビョンホンの人気に火を付けることになったドラマ『美しき日々』で共演したチェ・ジウを始め、歌手のシン・スンフン、IVY、ゼロが登場して観客を沸かせた。

 また、この日約100名にも及ぶ取材陣が同イベントに集まった。ある一人の記者は「日本の俳優がこれだけ大きなイベントを開いたことはなく、その上東京ドームでするなんて考えられない出来事だ」とコメントした。さらに、日本の韓流雑誌“K・BOom (ブーム)”のマツバラ・ヤスシ編集長は「ついに韓流がこのような超大型のファンミーティングが開催できるまでになった」と語った。また日刊スポーツは4日の紙面で「音楽経験のないスターが東京ドームで単独公演を行ったのは国内外を問わずイ・ビョンホンが初めて」とし、また「イ・ビョンホンは東京ドームの歴史に新しいページを刻んだ男」と伝えた。

東京=チョン・ジェヨン記者
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