『トカゲ』カン・ヘジョン「女が愛されるのは権利です」


 目の錯覚だけではなかった。実際、彼女の顔はコーヒーカップの中に隠れてしまうように見えた。アートカフェのコーヒーカップが普通よりひときわ大きいこともあったが、とてつもなく小さな顔のためだ。チョ・スンウと共演した恋愛映画『トカゲ』(27日公開)で18年間、1人の男だけを愛するアリ役のカン・ヘジョンだ。

 「一昨年でしたか、タイでCMを撮った時でした。起きたら頭の下でトカゲが死んでいたんです。私の重い頭に押されて死んだのかしら?」

 好きな男に恋焦がれながら何回もいなくなるこの映画のアリのように、彼女は始めからメチャクチャな話をして逃げた。まるでシッポを切って逃げるトカゲのように。

 『トカゲ』は愛にまつわるおとぎ話。カン・ヘジョンの言葉を借りれば、18年間1人の女を追う男と、18年間1人の男だけを恋い慕う女のロマンスだ。フクロウのような目をパチクリさせながら、さらに説明は続く。「女子高生たちのおとぎ話みたいな映画ですよ。どうしてって?女の子たちが集まってこんな男ならいいのにっておしゃべりする、白雪姫やシンデレラの恋の話みたいな」



 「そんなおとぎ話おとぎ話を信じる人だったっけ?」とのいじわるな質問には「現実の愛がどんなにドロドロしていても、女はそんな夢を持つ権利、愛されて大切にされる権利があります」と微笑む。

 実の父と情事を交わさなければならなかった『オールドボーイ』のミド、「50万ウォンだけちょうだい、さあ、あげるから」と挑発する『恋愛の目的』のホン、そして「私ほんと早い」と無垢な笑顔の『トンマッコルへようこそ』のヨイルまで。これまでカン・ヘジョンは‘不良’と‘白痴’の間を行ったり来たりしてきた。ピンからキリまで行き来する彼女の演技は24才という年齢にもかかわらず彼女の名を映画界に知らしめたが、と同時に日常という状況でのカン・ヘジョンの演技が気になったのも事実だ。

 『トカゲ』でカン・ヘジョンは初めて日常を演じる。愛する男とともに寿司を食べ、野いちご酒を飲み、すぐ逃げなければならない(その理由がこの映画のモチーフの1つ)刹那の感情。演技に対する判断は観客の役目だが、そうした点でカン・ヘジョンの演技は『トカゲ』以前と以後に分けられるだろう。

 『トカゲ』は制作発表当時からチョ・スンウとカン・ヘジョンという実際の恋人がキャスティングされて話題になった。

 演技の外面的な部分についての質問には、またしっぽを切られたが、‘俳優チョ・スンウ’についての評価はほとんど尊敬レベルだ。「この俳優、スキがないね、と言いました。頭の中にいつもあるようです。シーンごとの計算が。映画の中にキスシーンがあります。私はもう少し感情を出すべきと言ったけど、感情は押さなければならないと止められました。初めは私の考えどおり撮影したけど、後で彼の意見に従いました。撮り直したシーンを見たら、やっぱり彼の言葉は正解でした」

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