予告編からして尋常ではなかった。『親切なクムジャさん』のパロディといえる予告編は、映画に対する関心を高めるのに十分だった。新作の予告編はいかに他の映画と違うかを見せるのが普通だが、ためらいなく他の映画を借用できる心臓の強さにも驚いた。このように大胆不敵な映画『甘くて殺伐とした恋人』は久しぶりに味わうちゃんとした料理の感がある。
これまでロマンチックコメディという名のもとに1人か2人のスターを前面に出して似たり寄ったりの物語を冗談チックに描いた映画がどんなに多かったことか。ところが『甘くて殺伐とした恋人』は従来のロマンチックコメディに飽きてしまった観客の嗜好を‘スリラー’と‘キワモノ’というスパイスで刺激する。
映画はタイトルどおり怪しい内容だ。30代も終りに近づいているキスの1つもしたことがないマヌケ男(パク・ヨンウ)と自称イタリア留学準備中の、元カレ整理が得意な女(チェ・ガンヒ)のラブストーリーだ。これだけなら特に珍しいことはない話だ。
互いに違う男女の恋バナはたくさん見てきた。しかし女のケタ外れな‘過去’が明らかになり、興味をそそられる。
確かに、俳優の顔ぶれだけで見ればこの映画の好感度はそれほどないかもしれない。しかし映画を見れば、どんなスター俳優よりもパク・ヨンウ、チェ・ガンヒが最もふさわしいキャスティングだということがわかる。『血の涙』『作業の定石』でカリスマと猟奇の間を行き来する多様な人物像を演じて見せたパク・ヨンウは、ちょっとマヌケな純情派の30代独身男の姿を見事に具現化した。チェ・ガンヒも独特のイメージを十分活かしてキワモノだけど決して憎めない恋人の姿を見事に演じた。チョ・ウンジ、チョン・ギョンホが時おり添えるコミカルな味もいい。最近の映画によくある笑いの素材‘トイレユーモア’や汚い言葉遣い、方言などを使わなくても自然と笑える。
その結果『甘くて・・・』はコミック・キワモノ・スリラーがうまくミックスされた無国籍料理のようだ。ただ、この映画が映像物等級委員会から18才観覧可判定を受けたことは残念だ。「青少年の情緒に悪影響を及ぼしうる」というのがその理由だ。ありとあらゆる汚い言葉やスラングが飛び交い、血が飛び散る学校暴力映画が15才観覧可判定を堂々と受けていることからすると、首をかしげたくなる。
それにもかかわらず面白い低予算映画の可能性を見せてくれた『甘くて・・・』はその興行の成否に期待が集まるおもしろい作品だ。4月6日公開予定。