韓国映画、不治の病ブーム再び


 最近公開した『淫乱書生』で、主人公ユンソ(ハン・ソッキュ)の口封じのため、刀を取り出したチョ内官(キム・レガ)は言う。「一番口が固いのは、死者だ」。

 もちろん死がもたらしてくれるのは秘密だけではない。死は決して変質することのない愛を大切にしまっておくための最後の手段であり、最も完璧な方法だ。同じ脈略から、不治の病は純情を証明する最も劇的なきっかけになる。長いメロドラマの歴史の中で死と不治の病が重要なツールになってきたのは当然の結果だ。

 2005年末に始まった韓国映画界の恋愛ブームは2006年も続いている。そして現代医学の目覚ましい発展を無視するかのような涙のメロドラマと愛の虜になった2006年の忠武路(チュンムロ/韓国映画の中心街)に、不治の病がはびこっている。近年まれに見る大流行だ。

 先月公開した『百万長者の初恋』と公開目前のチェ・ジウ&チョ・ハンソンの『連理の枝』には不治の病でも明るさいっぱいのヒロインが登場する。新人のイム・ジョンウンとチ・ヒョヌが共演する『愛してるから、大丈夫』も同様だ。爽やかなヒロインが不治の病にかかる。

 チャン・シニョンとペク・ソンヒョンが爽やかな年上女と年下男のロマンスを演じる『ロマンシング・フラワー』では、逆に男性主人公が不治の病の犠牲者になる。恋愛モノではないが、パク・グァンス監督の新作『まぶしい日に』では、チンピラ役のパク・シニャンと、彼がひょんなことから引き取ることになる愛らしい子どもソ・シネの2人が共に不治の病にかかっている。

 今年1年に20本余りの韓国恋愛映画が公開を控えていることを考慮しても、かなりの“発病率”だ。不治の病をストーリー急展開の題材に利用した作品まで含めると、その比率はさらに高まる。

 テレビドラマに目を向けると、その傾向はさらにはっきりしている。ユ・ホジョン主演のKBS週末ドラマ『人生よ、ありがとう』は不治の病を治療する過程での家族愛を丁寧に描いている。主人公の事故で放送中断になったMBC『オオカミ』は、2人の男性主人公エリックとオム・テウンから愛されるヒロイン、ハン・ジミンが不治の病を患っていた。KBSで放送予定の『野獣と美女』も同様、不治の病が主要テーマだという。

 しかし、メロ映画やドラマの中の不治の病を乏しい創造力の産物だとただ批判するわけにはいかない。不治の病の設定をしたにせよ、不治の病に負けない新鮮なメロ映画は観客と論壇から着実に支持されてきた。

 アルツハイマーにかかった妻を見つめながら生きる夫の切なる愛を描いたチョン・ウソン、ソン・イェジンの『私の頭の中の消しゴム』は2004年国内興行に続き、昨年は日本でも韓国映画最高の興行記録を打ち立てた。

 昨年最高の恋愛興行作であるチョン・ドヨン、ファン・ジョンミンの『君は僕の運命』は、エイズにかかった喫茶店のレジ打ちの女性と田舎の青年の恋を切々と描き、好評を得た。主婦の視聴者を泣かせた“メン・スニ”チェ・ジンシルのドラマ『バラ色の人生』はどうだっただろうか。

 ここ数年の間に不治の病をテーマにした恋愛物が見せてきた高い興行打率が現在の不治の病をテーマにしたメロドラマの隆盛に影響を与えたことは否めない。しかし、不治の病を扱ったメロドラマの成功が、これ以上なく陳腐な題材であっても現代の観客の好みに合う新鮮なストーリーを作り出せるという自信を与えたとの分析もまた無視できない。

 雨後の筍のごとく登場した不治の病を扱った恋愛物は、怠慢によるクローン現象なのか、マンネリズムを超える秀作なのか、論争は実物を見てからにしよう。ただし、これだけは誰も否定できないはずだ。いつの時代でも“不治の病の恋愛物”のパワーは変わらないということを!

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