【レビュー】チョン・ウソン&チョン・ジヒョン主演『デイジー』


 「ありがち」なストーリーの恋愛映画が、失敗の確率を少なくする「ありがち」な方法の1つは、主人公の男女の幻想をどれだけたくさん取り入れるかに重点を置くことだ。美男美女のロマンスは、口では文句を言ってもチラッとでも見たくなるものではないだろうか。もちろん映像や音楽で貧弱なエピソードをカバーするやり方もよく使われる。頭に切なさを訴える正攻法の代わりに、目や耳に訴えて胸をしめつける遠回りなやり方のほうがまだ有効なジャンルだからだ。

 映画 『デイジー』はこの2つの分かれ道が出会うところに立つ城だ。CMでベストカップルと誰もが認めるチョン・ジヒョンとチョン・ウソンを安全パイに、『無間道』で実力を認められた香港のアンドリュー・ラウ(劉偉強)監督がフィルム・ノワールを散りばめながらさわやかな恋愛を描いた。

 小さくて可憐な花『デイジー』の花言葉「隠された愛」は映画の副題であると同時に主題にもなっている。花の国・オランダのアムステルダムを背景に3つの視線が絡み合う。


 ◆1.ヘヨン(チョン・ジヒョン)の独白。「広場で肖像画を描く私。家族も友達も誰一人いないこの町で唯一の支えは毎日デイジーを家の前に置いて行く男。その男を待ちながら1日を過ごす。ある日、広場でデイジーの鉢を持つ男(ジョンウ)が現われた」


 ◆2.パギ(チョン・ウソン)の独白。「私は泥で火薬のにおいを消す殺し屋だ。ヘヨンに出会ったその日からデイジーを届ける。彼女を愛しているが、組職に彼女が私の女だと知れた瞬間から彼女は危険にさらされる。近くにいてもそばにいてやれないこの身。そんな彼女にある男(ジョンウ)が近付いた。ヘヨンは彼をデイジーの贈り主と誤解するが、そばに行って本当のことを伝えることはできない」


 ◆3.ジョンウ(イ・ソンジェ)の独白。「私はインターポール。麻薬密売団を追跡中だ。広場でやつらの目を避けてある女(ヘヨン)に肖像画を預けた。ところが私の身分を隠す盾にしたこの女、私を待っていた恋人と誤解している」

 3人の男女の運命はパギに「ジョンウをターゲットにしろ」という依頼が来たことで波乱に巻き込まれる。やむをえず互いに銃を向けなければならないパギとジョンウ。ラウ監督の前作『無間道』で生きるために相手を殺さなければならない2人の男ユ・ゴンミョン(アンディ・ラウ)とチン・ヨンイン(トニ・レオン)を追い込む運命が再現される。しかし『デイジー』のポイントはパギとジョンウをめぐる運命のいたずらではなく、パギとヘヨンを主軸にした恋愛物語に置かれているから『無間道』で見られた濃い心理描写に期待するのは難しい。


 『デイジー』はチョン・ジヒョンを前面に押し出して作られたアシア向けプロジェクト。クァク・ジェヨン監督が脚本を書いたことから同じクァク監督の『僕の彼女を紹介します(2004)』と比較されがちだ。事実、チョン・ジヒョンの透明な肌とゆれる髪が画面いっぱいにクローズアップされる構図が、『デイジー』でもしょっちゅう使われている。ラウ監督はクァク監督のようにあからさまな「チョン・ジヒョンの、チョン・ジヒョンによる、チョン・ジヒョンのための」映画を作らない。『僕の彼女を紹介します』でチョン・ジヒョンの相手役だったチャン・ヒョクに比べ、チョン・ウソンのほうがいっそう重みがあることも理由だ。『私の頭の中の消しゴム』で日本では韓流スターになった感のある彼だから「韓流の相乗効果」を上げるためにも無視できなかったのだろう。
リチャード・ギアやクレア・デーンズとの撮影(映画『The Flock』)日程を延期してまで『デイジー』を選んだラウ監督。彼の計算がどれだけ当たるか注目される。9日公開。

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