「女優でない別の人生を生きたとしても、私は幸せだったと思います。たとえ不幸だったとしても、とらえ方によって人生は変わるということです。私にだって、辛くて大変なことはあります。辛くて大変だから、前向きに考えるのです」
8日(現地時刻)午後1時、ベルリンのポツダム広場が一望できるホテルで、イ・ヨンエは穏やかで美しい口調で話した。インタビュー中、イ・ヨンエはずっと両手を組んだまま、背筋をピンと伸ばして座っていた。窓の外では雨の音が煩わしく響いていた。
「30代半ばになって、とても充実しています。疾風怒濤の時期とでもいうか、20代のころの多くの失敗と挫折が基礎になったようです。女優としては、今が最高です。今は安定していて、深くて幅広く物事を考えることができるようになりました」
女優として、イ・ヨンエは頂点に向かっている。9日に開催されたベルリン国際映画祭に審査員として招請されたのもその証拠かもしれない。
―あなたにとって、演じるということは、生まれながらのものですか。
「生まれながらというのは、確かにあるようです。また、運命や運もあったかもしれません。しかし、そうだとしても忍耐と努力がなければ長続きしません。私も20代でたくさんの試行錯誤をしました。その度、自分自身を振り返りながら反省しました」
―普段、いろいろと考える方ですか?
「あれこれ考えすぎるので、忘れようとしてます」
―どんなことを考えるのですか?
「この職業は、周囲からあれこれ言われたり、思わぬアクシデントもたくさん起こります。だから、一般の人よりもたくさんのことを考なくてはいけません。どう対処しなければならないのか、他人の視線に気を使い…。だから、近道があってもいろいろと考え、遠回りしてきました」
―そんなに自分に厳しくしないと行けないのですか。
「世の中の女優という職業に与えられる権利と義務があるということです。しかし、自分に厳しくするというのは、必ずしも悪いことではありません。女優はみんなから注目されるので魅力的ですが、反対に本当に信じられないような噂の対象にもなるからです」
だから、これまでイ・ヨンエにはスキャンダルがなかったのかもしれない。7日、コスダック上場企業NUVOTECが『株式会社イ・ヨンエ』を設立すると発表し、新聞の社会面トップ記事になる前までは。イ・ヨンエは激情した。
「以前にも、こうしたオファーがたくさんありました。しかし突然、私の許可もなしに自分たちの利益を得ようというやり方には本当に憤りを感じます。それもよりによって、ベルリン映画祭が開かれているこの時期にあわせて。そのうえ、家族まで巻き込んで、本当に我慢できません。今度ばかりは法的対応を取るつもりです」
一番記憶に残っている作品は何ですか。
「周囲の人たちの多くが『宮廷女官チャングムの誓い』(原題『大長今』)と『親切なクムジャさん』を挙げます。しかし実際、私の中で思い入れのある作品は違います。とても大変だったのに上映が早期終了したり、視聴率が出なかった作品です。醜いアヒルの子とでもいうべきでしょうか」
イ・ヨンエは、今回のベルリン映画祭で、審査員として全19編の映画を見なければならない。しかし「普段は、マニアのように映画をたくさん見る方ではない」という。
今でも両親とアパートに住んでいるイ・ヨンエに世俗的な質問をしてみた。
―みんなの恋人は、1人の男性の恋人になかなかなれないでしょう。
「それは、本人の意思によるものでしょう。でも…恋愛って、1人でできるものじゃないでしょう」