【インタビュー】イ・スヨン「宝物のようなアナログ盤を出したい」


 「両親を若くして亡くしているからでしょうか、私の声には恨(ハン、痛恨・悲哀・怒りなどの感情)が取り付いているそうです」

 「悲しい感情をうまく歌えることが私の長所ではないでしょうか?韓国人固有の恨という感情が私の声に自然と溶け込んでいるようです」

 イ・スヨン(27)が最近リリースした7thアルバム『Grace』で各種チャートのトップ圏内をキープしている。訴える力に満ちた彼女の歌声は、今回も多くの人の心を見抜いているようだ。

 歌に昇華されるイ・スヨンの哀切な感性は悲痛な過去があったからとも言える。小学校2年生の時、交通事故で父親を失った彼女は、デビューを控えた98年に再び母親を交通事故で失った。

 「私の人生で両親を亡くしたこと以上に悲しいことはない」と言う彼女は当時の話にも毅然とした態度で答えた。

 「天が崩れるようでした。でも時間が経つにつれて誰もが経験する事を少し早く経験しただけだと思うようになりました。デビュー当時、私に両親がいないから不憫だと言う人も多かったですが、私自身はまったくそんなことは感じませんでした。いつも両親の愛情を受けて幸せに育ったし、その愛は今でもたくさん残っています」



 99年にファーストアルバムをリリースしてから7年。両親のいなくなった二人の兄弟はいつの間にか二十歳を過ぎて妹は社会人になり、弟は軍隊への入隊を控えている。

 「1年中忙しいわけではないので、時間がある時は弟や妹たちの面倒を見ることができました。でも、一人一人が自分の力で大きくなったと言うのが正しいかもしれません」

 今回のアルバムでイ・スヨンはほとんどの曲を作詞した。「日常で感じた感情を活かして歌詞を作れば、実際に歌う時にもっと気持ちを込めることができます」

 イ・スヨンは「歌手であると同時に作詞家でもあるイ・ソラ先輩を尊敬します。美辞麗句ではない率直な感情をそのまま伝達しているのが魅力です」と語った。

 しかし彼女に作曲をメインにしたいという欲はない。「作曲にまで気を使うと、歌に必要な時間をたくさん消耗してしまうようなので…」

 「周囲にイ・スヨンという歌手は悲しい曲ばかりを歌うと思われることに不満では?」と問うと大きく目を見開いた。「音に色がなければ表面だけの歌手に過ぎません。歌声で私を記憶してくれるファンがいるだけでも感謝しているのに、 不満だなんて…」

 イ・スヨンはCD自体も購入する人が減っているこの時代の音楽界の環境に不満が多い。その理由を「思い出も興奮も消えてしまうようだから」と言う。そうした考えから彼女は7thアルバムをアナログ盤でもリリースする考えを持っている。

 「小さい頃、音楽はターンテーブルで聴いていたので、アナログ盤がものすごく記憶に残っています。ところが自分が歌手になってみると私にはそんな宝物のようなものがまったくありません。過去に対する単純な郷愁とでも言いましょうか…。アナログ盤は必ずリリースしたいです」

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