【レビュー】韓国初の女性飛行士の生涯を描いた『青燕』


 吸引力の強いドラマに比べて見どころに欠け、圧倒的なスペクタクルに達することが出来ない弱いプロットで観客を失望させた忠武路(韓国映画の中心地)大作の悲しい記憶は『青燕』(29日公開)を見れば相当部分を忘れられそうだ。大義名分よりは夢のために生きた女性の飛翔と墜落は、数千メートル上空に昇り、すぐ墜落した複葉機の放物線とそっくりそのまま重ねられる。『青燕』が贈る悲劇のスペクタクルは意外に深く、広い波紋をスクリーンに巻き起こすだろう。

 夜はタクシー運転手、昼は飛行学校の生徒として学ぶ朴敬元(パク・キョンウォン、チャン・ジニョン扮す)の夢は最高の女性飛行士。「朝鮮人と日本人、男と女を区分しない空が一番好き」と言う彼女には、奪われた祖国を取り戻すという雄大な独立運動の意志も、ささやかな家庭を築くといった素朴な想いも後回しだ。



 デビュー作『鳥肌』で専門家らの高い評価を受けたユン・ジョンチャン監督は、約10 倍の制作費(約100億ウォン)を投じた超大作でも独自の執拗さと沈着さを失っていない。派手なイメージばかりで人間を後回しにしていた先輩監督たちを反面教師にし、敬元というキャラクターにすべてを投じて『青燕』のドラマに熱い想いを吹き込む。

 敬元を愛する裕福層の息子ハン・ジヒョク(キム・ジュヒョク)やライバルで親友の日本人女性操縦士、木部雅子(ユミン)のキャラクターも同じだ。植民地女性のヒロイン話ではなく、当時も今も紆余曲折を生きる人間の弱さを立体的に照明する。



 全日本飛行大会で朴敬元の飛行機が雲の上に聳え立ち、360度回転する映画の中盤シーンや、失敗を予感しながらも暴雨に挑んで山脈を越えようとする最後の飛行シーンは『青燕』のクライマックス。最新のCGを確認すると同時に、「スペクタクルにドラマを加える」という表現が意味することが何であるかを如実に見せてくれる名場面だ。そのダイナミックな飛行は朴敬元の希望と挫折、そして怒りと悲しみを切々と伝える。

 複雑な時代を描いた映画『青燕』には事実と虚構が混在している。朴敬元を「親日派」として見る観客にも、「時代の犠牲者」として見る観客にも監督は満足感を与えない。いや、是非そうした両分されたイデオロギーの呪縛から脱することを切望する。まるで朴敬元の故郷の空を横切った青い燕の滑降のように。

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