【レビュー】映画『6月の日記』


 ある大雨が降り注ぐ陸橋の上で、制服を着た中学生が何者かにナイフで刺殺される。その翌々日、同じ学校で同じクラスの生徒がアパートの屋上から転落死した。無関係だと思われていた二つの死の共通点はただひとつ。司法解剖の結果、胃から幾重にも巻かれた紙切れの入ったカプセルが発見されたことだ。紙切れには次の犯行を予告する犯人の日記が書かれていた。


 凶悪事件担当のベテラン女刑事チュ・ジャヨン(シン・ウンギョン)と、5時ダッシュならぬ“7時ダッシュ”を目指す新世代刑事キム・ドンウク(ムン・ジョンヒョク)が、この連続殺人犯の跡を追い始めた。映画『6月の日記』(韓国で12月1日に公開)の冒頭は、こうしたスリルに満ちた状況で幕を開ける。

 本作は“エリック(本名:ムン・ジョンヒョク)の主演デビュー作”として売り出しているものの、イム・ギョンス監督の狙いは他にある。海外へ移住するほかないとまでいわれ、社会的問題となっている“イジメ”を全面的に取り上げ、その背景には“無関心”が渦巻いているとする監督の分析には、思わずうなずかされる。


 残念なのは、テーマを消化するには映画の完成度が及んでいないと思われる点だ。シン・ウンギョンとムン・ジョンヒョクが好演しているものの、先輩女刑事と後輩の男刑事という魅力的なコンビの力をうまく発揮するまでには至っていない。また、『親切なクムジャさん』(邦題:同/監督:パク・チャヌク)、『オーロラ姫』(日本未公開/監督:バン・ウンジン)が公開されたことで、連続殺人というジャンルとその手法も常套化している。そんな中、イジメられっ子の母親役として出演する金允珍(キム・ユンジン)の演技だけが抜群に光っている。悲劇の人として事件の中心に登場する彼女の表情と感情は、『6月の日記』が持つマイナス要因をしばし忘れさせる威力を持っている。

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