【紀行】宮崎駿の夢の世界 ジブリ美術館


 トトロは文字通り突然現れた。井の頭公園の木々が生い茂った森で、方角が分からなくなって不安になっていた時だった。

 森の隠れた主であるようなカラフルな3階の美術館が可愛らしい姿をぬっと現し、その前にスーパーヘビー級のプロレスラーより巨大な体のトトロの人形が目を光らせた。

 黄色い潜水艦のような形をした“トトロ哨戒所”の心そそられるキャッチフレーズが異邦人を刺激する。

 「Let’s Lose Our Way, Together!(迷子になろうよ。いっしょに!)」

 ここがまさに世界の宮崎駿(64)の信者たちが巡礼するアニメの聖地。「ジブリ美術館」(The Ghibli Museum)である。

 聖地は思ったよりこぢんまりとしていた。そのうえ、1階は80席の小劇場を除くと、特別な展示物がないホールになっており、2.3階の5.6部屋と展示室がこの世界的なアニメの巨匠の生涯を要約していた。

 美術館を一緒に訪れたタイの出版編集者ピンヨさん(30)が、1階レセプションホールの壁面を指さした。

 「えらそうな美術館 人間より作品を大事にしている美術館、おもしろくないものを意味ありげに並べている美術館、展示の順序を強要する美術館…、私が最も嫌う美術館の風景です」

 2001年10月1日、宮崎駿が開館前に心に決めたことだ。その決意は現実になった。

 謎の迷路のように、3階の天井から1階の床までつながる螺旋状の階段は、聖地を訪れる巡礼者たちを思いのままに誘う。

 『風の谷のナウシカ』(1984)『天空の城 ラピュタ』(1986)、『隣のトトロ』(1988)など初期の作品から『もののけ姫』(1997)『千と千尋の神隠し』(2001)『ハウルの動く城』(2004)など最近の作品まで、数百余りのキャラクターが1階ガラス窓でスタンドグラスの服を着ていることだけでも、目がチカチカしそうだが、屋根のガラスのドームから垂直に射す太陽の光で、ほとんど目も開けられない。

 2階の階段から降り、「少年の部屋」に入る。まるで5分前まで作業をしていたかのように、机の上にはスケッチブックが置かれ、画用紙には『未来少年コナン』がにっこり笑っている。

 宮崎駿監督が27年前に演出したテレビシリーズの原画だ。

 作業室の再現といっていいほど、監督の昔の漫画、背景の下書き、さらにはおもちゃのミニチュア双葉機までそっくり置かれている。

 隣の部屋には、その原画を一度に回してみることのできる映写機が早く使ってくれといわんばかりに置かれており、その次の部屋には、宮崎駿監督の手あかの付いたアニメ書籍とコンテ本、ビデオテープがまるで触ったら倒れてしまうほど、山積みになっていた。

 展示品と観客の間を遮るものは何もなかった。本やテープは直接触ってみるよう勧めているほどだ。こんなふうに、4~5部屋をあちこち回ることで、1本のアニメがどのように誕生するのかを実感することができる。

 ゆっくり回っても、2時間あれば十分な美術館。観客に直接手で触って見たいと思わせる美術館。宮崎駿が生涯夢見た美術館の姿だ。

 最後の部屋で見た写真の中の監督の顔が、少年のように澄んでいた。

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