【レビュー】ソン・イェジン主演の『私の頭の中の消しゴム』


【編集者注】 映画『私の頭の中の消しゴム』が22日、日本で公開されます。今回、2004年11月、朝鮮日報紙面に掲載された同映画のレビューを再び紹介します。この映画は2004年11月に韓国で公開され、約263万人の観客を動員するなど興行的にも成功しました。

 目にたくさんの涙を溜めた鄭雨盛(チョン・ウソン)の姿だけでも、すでに『私の頭の中の消しゴム』(イ・ジェハン監督)の興行的威力はある程度予想されていた。これまで大雑把なイメージで「女なんか」と眼中にないように見えたチョン・ウソンが、ひたすらヒロインと恋に落ちて涙を見せるという設定だけでも映画は十分に魅力的だ。

 建設現場で働く大工のチョルス(チョン・ウソン)は自分が務める会社の社長令嬢スジン(ソン・イェジン)の物忘れがきっかけで恋をして結婚する。しかし、若年性アルツハイマーにかかったスジンはチョルスとの愛の記憶さえ失って行く。

 愛とは結局記憶だ。最も近い記憶から忘れてしまうアルツハイマーのために愛する人から忘れていくという皮肉としか言いようのない状況が物語の軸となる。特に『約束』『手紙』といった純愛映画が主に不治の病や別れをモチーフにしたのに対して「精神的死」や「忘却」といったもので悲しみを極大化させる発想は新鮮だった。

 しかし、ある年代(20代中盤?)以降の世代にこの映画は、はらはらさせる「スリラー」だ。ある瞬間に飛び出すオーバーな愛情シーンのためだ。主人公をどう愛らしく演出するかが恋愛映画の重要なポイントとなるが、見た目に執着し過ぎるのもどうかと思われる。チョルスが建設現場で幹部と争う場面も360度のドリーショットで映されているのは腑に落ちない。タフなチョルスのイメージを刻印させるために、ドアのないジープで川辺を走る姿は異国的ではなく異質的に感じられる。

 もちろん前作『カット・ランズ・ディープ』で見せた裏社会の演出力や、男性キャラクターを光らせる監督の能力はさらに成長している。初々しいイメージのソン・イェジンからエロティックなイメージを引き出した点も評価に値する。しかし、それなりに節制したシナリオと度が外れたロマンチックな演出は不協和音を奏でる。台詞のトーンは変わらないが、表情や視線の強弱を調節することを分かっているチョン・ウソンの演技は一歩成長したと評価されるには十分だ。

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