映画『四月の雪』で感涙の演技を極めたソン・イェジン


 映画『四月の雪』(監督ホ・ジノ、制作ブルーストーム)で観客を涙で包み込んでいるソン・イェジン(孫芸珍)。成熟した感情のスペクトラムが強烈だ。

 配偶者の不倫を知った二人の男女が出会い、恋に落ちるというストーリー。ある意味、通俗的なことだとは言い尽くせないが、直説的な話法でもない。説明が親切なわけでもない。

 劇中インス(ペ・ヨンジュン)とソヨンの愛は既存の恋愛方程式とはかなり距離がある。傷を癒し合い、互いに心の空洞を埋めることになる。慰労なのか、欲望なのか、はたまた情熱なのか、代理満足なのか。それともそのすべての感情を集めたものなのか、まったく正体が明確でない感情の破片が続く。



 こうした感情を23歳の彼女が演じることは決して簡単ではなかったはず。ホ・ジノ監督のディレクションも不十分なことで有名だ。

 「かえって声を自由に出せたら楽だったと思います。大好き、逢いたいみたいな直接的な表現をすれば、どれだけ楽だったでしょうか」

 「今回が最後」と思って毎回ベストを尽くしたと言う。

 初めての撮影の日に病院の手術室前で泣くシーンを8時間かけて撮った。目薬も使わず一日中泣き続けた。ホテルに戻る時は足に力が入らなかったと言う。

 「あらゆるアングロから何度も撮りました。シナリオでは擦れ違うシーンに過ぎませんが、全力でやらなくてはと思いました」



 冒頭から無心になってカメラの前に立ったというソン・イェジン。ソヨンの感じる複雑な感情を細かく演じる彼女の演技は観客の心の門を開くことに成功した。悔しくて泣いて、恥ずかしくて泣いて、辛くて泣いて…。彼女が見せた多くの涙、広まった演技の幅に拍手喝采が送られている。これからは『永遠の片想い』『ラブストーリー』の少女ではない、一人の女性として成熟した魅力に観客たちはすっかり魅了されるだろう。

 劇中、照明監督として登場するインスが自分の職業について説明しながら「作る時は面白いが、終わってしまえば本当に虚しい」と言うと、ソヨンが「それでも作る時は面白いのでは?」と聞き返す。そう、愛が虚無という結論であることが分かりながらも避けることが出来ない、その甘い誘惑から決して目を背くことが出来ないということをソン・イェジンは水墨画のような演技で見せてくれた。

 ソン・イェジンとベ・ヨンジュンは開かれた結末の『四月の雪』に他の結論がほしかったという。ソン・イェジンが望んだのは悲劇的な結末。映画『マディソン郡の橋』がいつになっても記憶に残る理由はハッピーエンドでなかったからだと言う。

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