「あれ?これって私の話じゃない?」
ドラマ『私の名前はキム・サムスン』ブームの背景には感情移入や同一化といった理由がある。20~30代の未婚女性たちはサムスンの姿を見て自分と重ね合わせる。すべてが似ているわけではない。しかし、多くの面で共感を得る。サムスンの喜怒哀楽の中に自然と自分の姿を発見している。
サムスンは弱点が多く愛らしい。レストランの社長ジノン(ヒョンビン)が「あなたは魅力がある。自分に魅力があるということを知らないのがあなたの魅力だ」という台詞がこれを説明している。
30歳のオールドミス。ルックスは今一で体も太っている。名前のように性格も無茶苦茶だ。実家も平凡で精米所の三女だ。恋人に振られ、若い社長に5000万ウォンも借金をしている。
コンプレックスの固まりで、何の取り得もない。
しかし、やることがどうにも憎めない。まるで哀れな自分の姿を見ているようで自然と共感している。
赤裸々にリアルで直説的な言葉と行動がまったく不快でない。
ようやくこぎつけた見合いの席に突然現われ、場を壊したジノンにあらゆる言葉を酔っ払って浴びせる姿がそれを物語っている。
DVDバン(個室でビデオを観ることができる店)でジノンの行動に驚いたサムスンが家に帰り「そんなに飢えていたかしら?」と言う台詞はあまりにもリアルで爆笑を誘う。
非常に極端な行動で堂々と男性に立ち向かう姿からは、以前のシンデレラのキャラクターとは明確に区別される面を見せている。
キム・ソナが演じるサムスンには、これまで彼女がスクリーンで演じてきたキャラクターが重なっている。
映画『夢精期』(2002年)で演じたピュアで清楚な教育実習生、『偉大な遺産』(2003年)で演じた失業女性のチャン・ミヨン、『Sダイアリー』(2004年)のナ・ジニはサムスンに進化する前のキャラクターだったに違いない。
中でも『偉大な遺産』でチャン・ミヨンが熱いカップ麺を食べて吐き出してまた食べるシーン、目の周りがマスカラで真っ黒になった姿などからは、サムスンのイメージがすぐに浮かぶ。
サムスンはキム・ソナの実際の性格とも似ている。ドラマの制作発表会で自分の交際相手を堂々と公開する姿からもサムスンの堂々さを覗うことが出来る。また、長年の外国生活で初めの頃は発音に問題があったが、今ではキム・ソナだけが持つ魅力の一つになっている。
「サムスンとサムシクを愛する人々の集まり3344」の会員は口々にこう語る。「世の中にはお金持ちの美人よりも普通に努力する人のほうがもっと多いということをサムスンを通じて目にすることになる」