すべてが初体験だった。
アクション大作も初めて、海外ロケも初めてだった。
忠武路(チュンムロ、韓国映画の中心地)で自他共に認める演技派俳優のファン・ジョンミン。デビュー作『ロードムービー』で各種映画賞を総なめにした。最近作『甘い人生』では過去が疑われるほどに完璧なチンピラ役を演じて観客の爆笑を誘った。作品性の高い映画で見せた彼の熱演ぶりは多くのファンを獲得するのに十分だった。
ところが来月12日に公開される映画『天軍』(ミン・ジュンギ監督、サイダスピクチャーズ制作)は100%の商業映画。彼の一味違った選択に観客の視線が注がれている。
「子どもの頃、『コマンドー』や『ランボー』に熱中しました。あんな格好いい映画に私も出たかったです」
制作費88億ウォンが投じられた超大作『天軍』は、433年前の過去にタイムスリップした南北の軍人たちが、放蕩が過ぎる青年、李舜臣(イ・スンシン)に会うというストーリー。当時、武科に落ちた李舜臣は、若さを持て余していた。彼が民族の英雄に生まれ変わる分かれ道で南北の軍人たちが後押しする。
ファン・ジョンミンの劇中での役は、英雄・李舜臣を欽慕する韓国軍将校のパク・チョンウ。原理原則しか知らない完璧主義者で、李舜臣を武科に合格させるために訓練をさせる。そのお陰でカメラの前でだけだが、大先輩の朴重勲(パク・チュンフン)にぞんざいな言葉を放った。
劇中、数百人の女真族と争う場面に備え、中国に発つ2か月前に基礎体力訓練を受けた。UDT水中爆破専門隊員を引き受けただけに、撮影前からアクション演技に多く準備を重ねた。今では手綱片手に武器を振り回すことが出来るほどの乗馬の技術があるという。ファンが驚くほどに派手なアクションを披露出来ると自信満々だ。
「大規模なアクションシーンは初めてなので、むしろ楽しさがありました。俳優が特別に見せることが出来る空間が少ないだけに、演技をすることがとても難しいです。少しでも大袈裟に演じれば、映画のカラーから脱してしまうからです。均衡を保ちながら演じるために監督ともよく討論しました」
こうしたファン・ジョンミンの姿勢が完璧なチームワークの大きな助けになった。朴重勲と金勝友(キム・スンウ)とは撮影が終わってからも互いによく連絡し合っているという。長期間にわたる撮影は互いを不仲にさせることが多いが、彼らは正反対だった。そのお陰で昼夜の温度差が20度もある劣悪な環境でも、和気あいあいとした雰囲気の中、撮影が進められたという。
「2か月くらい経った時に行った奥地で流した私たちの血の滲むような汗が観客の暑さを吹き飛ばすでしょう」
ファン・ジョンミンは現在、『君は僕の運命』『私の生涯で最も美しい一週間』の撮影終盤を迎えている。
『君は僕の運命』では一週間で15キロを減量するプロ根性を見せ付けたファン・ジョンミンは、デビュー以来最も忙しく充実した日々を過ごしている。