映画『台風』で3年ぶりのスクリーン復帰を果たす女優イ・ミヨン

 彼女はやつれ、疲れ果てていた。唇は割れ、親指の爪は真っ黒になっていた。

 ウラジオストックで撮影中の映画『台風』(クァク・キョンテク監督)の撮影現場。

 ピンクのダウンジャケットを着た李美妍(イ・ミヨン)が身をすくめて次のシーンを待っている。

 6月とは思えないほど冷たいロシアの灰色の霧が彼女を震えさせる。李美妍のシナリオの表紙には決心したような大きな字で「楽しめ」と書かれている。

 「みんなはシナリオを見てから出演を決めると言いますが、私にとって最も重要なことはフィーリングです。そのフィーリングが合わなくて3年も待ちました。長さの何が重要でしょうか?」

 これが『台風』のチェ・ミョンジュを選んだ理由だ。

 潤う唇と透明な爪に戻った李美妍が5時間の撮影を終えて興奮気味に語る。『純愛中毒』(2002)以来、3年ぶりにスクリーン復帰する彼女が、独特の素直さとはっきりとした口調で自分を表現する。

 「私が今までに主演女優賞(2000年青龍賞『魚座』、2003年大鐘賞『純愛中毒』)を2回受賞しました。ところが、その度に授賞式には関係者が私しかいないんです。分かりますか?その寂しさ?式が終わってからは他の受賞作品の関係者と一緒にお酒を飲みました。本当に全員一緒に賞を受賞して楽しい映画にしたかったんです」

 150億ウォンの制作費を投じた『台風』で李美妍は張東健(チャン・ドンゴン)と李政宰(イ・ジョンジェ)を結ぶ役であると同時に、二人の男の怒りを和らげる女性だ。北朝鮮を脱出後、南北共に捨てられ、韓半島全体に復讐を試みる実の弟シン(張東健)と彼を捕まえようとする韓国海軍将校のカン・ギジュ(李政宰)の対決の間に挟まれた麻薬と売春に染まった悲運のヒロイン、チェ・ミョンジュだ。

 近くにいたクァク・キョンテク監督が「俳優の二人が他でもない、東健と政宰ですよ。中身がなければ押し潰されてしまうキャラクターでしょう」と釜山(プサン)訛りで応援する。すると李美妍が「ドレミしか音が出せない時、ファの音を私に与えてくれる監督がいます」とクァク監督を見ながら話した。

 ドラマ『愛が花咲く木』でデビューしてから18年。30代も中頃に差し掛かった女優で年を取ったということ、結婚と離婚で辛かったが逆説的に人生が自由になったということ、そして再び現場に復帰したことなどを話しているうちに午後11時になろうとしていた。

 最後に「あなたにとって映画とは何か?」と聞いた。「はじめの頃は映画の世界に入ったらすべてを捨てなければと思っていました。ところが、その時から映画が漠然と良く思えたのです。女優という名前が与える親しみ、撮影現場が私に与えるエネルギーは、他では得られないものです。映画ですか?そうですね…掴もうとしても届かない、そんな夢のようなものでもあります」

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