まったく不可解なチョン・イングォンの「イ・ウンジュ発言」


 「世の中があまりにも分からないと、君は私を見ながら話す…。だけど後悔はないさ。泣きながら笑ったすべての夢、それだけが私の世界」(『それだけが私の世界』から)

 80年代中盤に一世を風靡したバンド「ドゥルグックァ(野菊)」は暗鬱な時代を生きなければならない若者たちにとって甘雨のような存在だった。絶叫の歌声で息苦しい現実を勝ち抜く希望の糸口を投げかけた彼に「時代の象徴」という表現は過度ではなかった。

 その全仁権(チョン・イングォン)が最近、再び世間で騒がれている。某インターネットサイトとの電話インタビューで、今年2月に自殺した女優イ・ウンジュと「4年間、男女の関係で愛し合った仲」と語ったのが発端だ。果たして何年ぶりに浴びたスポットライトだろうか?

 全仁権は「過ぎたことだから話すのだ。間もなく出版される本『心配しないで、あなた』にはレオンとマチルダのような仲だと書いた」と語った。イ・ウンジュの家族はこの言葉を聞いて「何の言葉なのかまったく理解することができない」と激昂している。ネット上にも非難の声が殺到している。

 全仁権の言葉が事実か否かは確認し難い。男女の愛というものが証言や物的証拠で判別することが出来ないからだ。たとえ二人が愛し合う仲だったとしても、二人は一人身だったのだから。

 問題は今、その話をし始めた全仁権にある。自分の発言が天国にいる彼女を再びこの世の人々の充血した視線の上に引きずり出すとは、誰が考えただろうか?これが生まれて初めて本を出版する人間の態度なのか?誰が見ても本を宣伝するための戦略という疑心を抱かざるを得ない。彼のイ・ウンジュに対する本当の想いが明らかになったのではないか。

 若さの偶像だった全仁権。頭髪の薄くなった彼がテレビのバラエティ番組でぎこちなく話す姿が、一時の暗いイメージを払拭することはあっても、彼に対する愛情を崩すことは出来なかった。

 しかし、今はちょっと違う。

全仁権、彼はまだ世の中をあまりにも知らない罪のない幼い子どもなのだろうか、それとも何かの事情で故人を再び呼び出さなければならなかった孤独な中年なのだろうか?

チェ・スンヒョン記者 vaidale@chosun.com
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