インタビューした宋康昊(ソン・ガンホ)は非常に明るく、茶目っ気たっぷりの表情だった。
多くの俳優が映画公開前には緊張を隠せないものだが、宋康昊は映画『ナンバー3』に出演した当時を思い起こさせる独特な笑いをしきりに見せ、映画『南極日記』(イム・ピルソン監督、サイダスピクチャーズ制作)に対する自信をのぞかせた。
「数日前、スタッフをはじめ俳優の家族や知人を招待して試写会を行ったが、映画を観た後、私の手をしっかりと握って『お疲れ様でした』と言って、とても喜んでくれました。これこそがまさに俳優として遣り甲斐を感じる瞬間だった。他の何よりも観客の言葉が心を満たしてくれ大事なことだ」
インタビューでは終始、笑顔を絶やさなかったが、『南極日記』の宋康昊は氷のように冷徹に一貫している。
宋康昊は南極の到達不能点を目指す探検隊長のチェ・ドヒョン役を目標達成のために隊員たちを死地に追い込む狂気じみた姿を取り付かれたように演じた。
宋康昊はベテランながらも人間味のある探険隊長の顔から徐々に現われ始める執着や貪欲、絶望の挙句に精神的に混乱した姿などを自由自在に演じた。 一般的に知られる茶目っ気たっぷりの人間的な宋康昊の姿はまったくなく、冷徹で悪魔的なカリスマだけがスクリーンを覆う。映像だけを見ても宋康昊が撮影でどれだけ苦労したかが伝わってくる。
宋康昊が最近、体重を増やしたことが、これまでの苦痛を逆説的に物語っている。「役の特性上8キロほど痩せたが、撮影が終わって緊張やストレスから開放された瞬間、こんなになってしまった。おかげで洋服を新調し直した(笑)。次回昨の『怪物』(奉俊昊(ポン・ジュノ)監督)のために、また5キロ減量しなければならない」
宋康昊は『南極日記』のニュージーランドロケについて「非常に独特の経験をした」と興奮気味に語った。同時に韓国映画に対する自信を改めて感じたという。
「あの有名なハリウッド映画『ロード・オブ・ザ・リング』のスタッフと共に撮影したが、彼らは日が沈んだり、少しでも危険だと思えば撮影をやめてしまう。初めは本当に合理的なのだと思ったが、非常に非効率な面が多くて韓国側のスタッフや出演者はかなり苦労した。後で現地の撮影で最後まで世話をしてくれたプロデューサーが、映画を見て驚く姿を見てすごく胸が一杯になった。彼らは私たちがこんな映画を作り出すとは思っていなかったようだ」
実直で冷徹なイメージに変身した宋康昊。果たして公開後もインタビュー中のような明るい笑顔でいられるだろうか。