全国W杯スタジアムツアーを敢行するチョー・ヨンピル

 19日午前6時、京釜(キョンブ)高速道路にベンツの白いスポーツカーが走っていた。運転をするのはサングラスをかけた趙容弼(チョー・ヨンピル)。助手席には誰もいない。趙容弼は「仕事が大変な時や寂しくなった時に訪れる」と京畿(キョンギ)道・華城(ファソン)に行く道だった。華城は趙容弼の妻と両親がいる場所だ。

 「周りが口を揃えて危険だと言うんです。スタジアム公演だけの全国ツアーを行うのは、まったく新しい挑戦なので、そんな声も多かったんです。かなり緊張していたのか妻がしきりに夢に出てきて…」

 趙容弼の全国ワールドカップ競技場ツアー『Pil&Peace』。5月8日の済州(チェジュ)島から今年の一年間、全国10か所にあるワールドカップ競技場をすべて回る計画。趙容弼は「観客動員を心配してない訳ではない。10か所すべてが成功するとは思っていないが、必ずすべての競技場を回りたい。リスクが高いほど私は挑戦したくなる」と話した。

 公演タイトルにある「Peace」という言葉の意味を知りたい。「音楽は考えや主張に関係なく、すべての人を一つにする力がある。私の音楽がその間に入って公演会場を訪れる全国各地の人々が一つになることが出来ればと思います」

 どの競技場でもまったく同じというステージは、平和の象徴である巨大な高さ25メートルの鳩の羽がステージ両サイドに設置される。

 スタジアム公演の構想は恐らく2003年8月30日から始まったようだ。趙容弼の35周年記念公演が行われた蚕室(チャムシル)メインスタジアムに集まった5万人を超えるオーディエンスは、土砂降りの雨も気にしなかった。雨の中にもかかわらず次々と会場に訪れるファンの姿を見て趙容弼は心の中で何度も泣いたと言う。「あの時どんなに感動したことか…。まさか今年は雨に降られないでしょう(笑)」

 『Pil&Peace』の前夜祭となる30日にソウル市庁前で無料公演も行われる。この日午後7時30分から2時間、市庁前に来れば誰もが趙容弼の歌声に酔いしれることが出来る。

 「94年に釜山(プサン)の海雲台(ヘウンデ)ビーチで行った無料公演を思い出します。朝鮮ビーチホテルから極東ホテルまでの白浜一帯が多くの人で埋まったんです。当時、警察の発表で46万人が集まったと言うのですから本当に驚きでした」

 そこで聞いてみた。「歌以外にやりたいと思ったり考えてみたりしたことがあるのか?」。趙容弼はにやりと笑いながらこう答えた。「質問された時くらいにしか考えたことはありませんが…うーん、答えが出てきませんね。私は私自身のことを良く知りません。ただ自由にやりたいこと、夢見てきたことをやりながら生きていくのでしょう。

何でも無理をしてまでやるのは嫌ですね」

チェ・スンヒョン記者 vaidale@chosun.com
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