2人の顔を知らなければ誰が監督で誰が俳優なのか分からないかもしれない。
ニット帽とサングラスにこだわるキム・ジウン(41)監督は、「俺たちが同時に(銃の)ポーズを取れば、おまえが先に死ぬ」と機先を制し、破れたジーンズ姿の李炳憲(イ・ビョンホン/35)は「僕が現場でアイデアを出すと幼稚だと笑っていたのに、後になって使われる」とカウンターパンチを浴びせた。
『反則王』『箪笥』をヒットさせた監督と、自身の出演作は20回以上見るという俳優が撮った映画『甘い人生』の中の5つの装置を通じて見た2人の映画と人生の話。
▲エスプレッソとスタイル
「暴力団の中に実際にそういう人物がいる。名問大学を卒業し、ブラックのスーツにこだわり、20メートル歩くたびに『親分』って挨拶される」(イ・ビョンホン)
「映画の中でイ・ビョンホンお気に入りのエスプレッソは甘さと苦みが混在する。それが人生で、この映画のテーマ」(キム・ジウン監督)
※『甘い人生』が退屈な映画と一線を画すポイントはスタイルだ。
イ・ビョンホンは「スリムにフィット」するブラックのスーツを着てエスプレッソにこだわり宣言する。
「俺はチンピラじゃない」
▲シャドー・ボクシングとノワール
「ジャンルを選ぶというのはテーマを選択するということ。悲劇的人物の破滅を通じた人生のアイロニー。私がやりたかったストーリーを最もよく表現できるジャンル」(キム・ジウン監督)
「僕は正直、観客としてこの映画を見たかった。でも喜んで参加した」(イ・ビョンホン)
※ホテルのスカイラウンジでシャドー・ボクシングをする映画の中のビョンホンは窓ガラスに映った自分の姿に満足する。しかし都市のネオンサインと対比される自分の暗い影(シャドー)。人間の暗い内面と破滅を盛り込むノワール映画をしっかり支えるシーンだ。
▲38口径リボルバー、そして転落
「復讐を始めながら伝統的「ブツ」を捨て銃を選択する。武器密売商から銃を買い、ぎこちない表情で復讐を開始し、そして壮烈に墜落する」(イ・ビョンホン)
「銃は男性的権力だ。栄光と墜落を同時に表しているのではないだろうか」(キム・ジウン監督)
※スミス&ウェッソン、リボルバーなどが乱舞するこのノワール映画後半の銃撃戦は映画の前半部と克明に対比され、強烈なコントラストをなす。
▲火の付いた木材と暴力
「映画が進むにつれ暴力のレベルが上がる。映画の中のビョンホンの感情状態と適合する。暴力の乱暴さと無謀さについて描きたかった」(キム・ジウン監督)
※映画の中の唯一のコミュニケーション手段は暴力だ。『箪笥』で原色の花柄の壁に少女の不安を表現したキム監督は火の付いた木材の箱と3メートルを超える泥の穴の陰湿さというスタイルで満身創痍の男の姿を描く。
▲La Dolce Vitaと甘い人生
映画の中の主な舞台はホテルのバー「La Dolce Vita」、『甘い人生』だ。フェデリコ・フェリーニが同じタイトルの映画(1960年)で描いたように、人生が甘いという命題が可能だろうか。甘い選択には苦痛が伴うもの。バー「La Dolce Vita」の裏には暗い社員用通路が共に映し出される。キム・ジウン流の耽美的ペシミズムだ。