映画『マラソン』で自閉症青年を熱演した趙承祐

 「これ以上の幸せはない」

 趙承祐(チョ・スンウ/25)の今の心境はきっとこうだろう。

 ミュージカル『ジキル&ハイド』でスタンディングオベーションを受けながら新年を迎え、27日公開の映画『マラソン』は評論家から高い評価を受け、試写会でも反応が良かった。さらには女優カン・ヘジョン(23)との交際も宣言した。

 24日にインタビューした趙承祐は前日も深夜0時まで公演を行ったために極度に疲れている状態で、喉をいたわって静かに話していたが、喜びを隠し切れない様子だった。

 趙承祐は「あまりにも反応が良過ぎて実際に見てがっかりされたらどうしようかと心配になる。今までにそんなことは沢山あったからなお更だ。だから公開までは周りの反応は気にしないようにしている」と謙遜して見せたが、『マラソン』のヒットの可能性は非常に高い。

 自閉症の役は決まったイメージで捉えられがちで危険だ。普通に真似るだけでは2時間もの間、観客の目を集中させるには難しい。すべてが演技の真似事に誰が拍手を送るだろうか。

 そういった点で趙承祐には合格点を与えられる。試写会に参加した特殊学校の教師が趙承祐の自閉症の演技に驚き、観客は趙承祐が演じるチョウォンという人物の喜怒哀楽に自然と飲み込まれていった。

 「実際のモデルになったヒョンジュン君とは最初に何回か会っただけで、その後はほとんど会わなかった。何度も会ったら私が想像することができないと思った。モデルがいることは確かに私の演技のベースにはなったが、支配的な影響を受けたわけではない」

 しかし、彼との試行錯誤はなかったのか。

 「撮影初日から考えを覆された。指の動き、目の瞬き、呼吸に至るまですべてを計算して演じようとした。間違った考えをしたのだ。そうやって演じてもモニターを通して見るとまったく何も感じられなかった。それからは徹底して自分を抑えた。形式にとらわれず、自由にやろうと思った。どうやっても自閉症の人の気持ちは誰にも分からない。ならば自由にやろうと決心した」

 すると自然にアドリブも増えたという。

 趙承祐は『下流人生』の撮影を終えた後、心身ともに疲れきっていた。その時に接したのが『マラソン』のシナリオだった。

 「体の状態があまり良くなくてシナリオの1ページ目を読んだ時は主人公が自閉症だと書いてあって暗い話だと思った。これは先にページが進まないと思った。ところがどうしたことか、ある瞬間から恐ろしい速度でページが進んでいった。辛い時だっただけに衝撃的だった。映像がすぐに頭の中に浮かぶほどだった」

 そして出演を決めた。いつかは演じてみたいと思っていた役だが、思ったよりも早くその機会が訪れて心配でもあった。しかし、逃げたくはなかった。その結果『マラソン』は彼の俳優人生において非常に重要な映画となった。

 「実際に演じながら緊張感が必要だ。ある程度の恐怖感があるからこそ自分自身に対する忍耐力に発展した」

 自閉症の演技以上に苦労したのがマラソンだった。

 「学生の頃に短距離を少しやっていたが、スタミナがなくて長距離はまったく駄目だった」と言う趙承祐は、クランクイン前に2~3日に一回、7~8キロの距離を走った。そして10キロマラソンにも挑戦した。

 趙承祐は「『下流人生』の撮影の時に体重を増やして脂肪肝の診断を受けたが、最近になって健康検診を受けたらほとんど正常に戻っていた。確かに走ることで身も軽くなって健康もよくなる」と今回演じたチョウォンのように笑った。

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