宮崎駿が再び呪いをかける。相変らずの魔力でだ。今度は初めから“魔法の城”に乗り込めと誘う。『千と千尋の神隠し』から3年ぶりの宮崎アニメ『ハウルの動く城』がいよいよ公開される。
血も涙もない荒地の魔女に呪いをかけられて90歳の老婆にさせられてしまった18歳の少女ソフィー。このままでは家にいられないと、ソフィーは荷物をまとめて家を出る。
そして、人里離れた荒地で“動く城”に遭遇する。何十件の家や古鉄を集めたようなこの城の主人はハンサムだが弱虫な魔法使いハウル。そんな二人が出会って奇妙な共同生活を始めるようになる。
ファンタジーを創作する魅力は作家自らが造物主となって一つの世界を完璧に作り上げることにある。英国のファンタジー作家ダイアナ・ウィン・ジョーンズの同名小説を原作にした『ハウルの動く城』で宮崎監督は、新たな想像力で宮崎ワールドの新境地をひらいた。
宮崎監督の9作目となる『ハウルの動く城』も今までと同様に宮崎作品の醍醐味を感じることができる。『となりのトトロ』や『天空の城ラピュタ』などの平和で愛らしい感性はもちろん、『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』の黙視的で暴力的な面も見せる。そして、『風の谷のナウシカ』や『紅の豚』に登場した飛行艇の姿も見られる。
しかし、前触れもなく強い表現で現われる啓蒙的なメッセージが多少負担に感じるのも事実だ。60代半ばに差し掛かった監督は「君たちもいつかは年を取る」と静かに訴える。
「年を取っていいことは驚くことがあまりないということ」と懸命な人間の象徴のように描写されているソフィーと、「美しくなければ生きる意味がない」と泣き叫ぶハウルの違いを明らかにした対照、“荒野の魔女”を人のいい痴ほう老人に化けさせた演出は、年老いることの楽しさと辛さを同時に暗示している。『ハウルの動く城』は23日から公開される。