映画『台風』でテロリストを演じる張東健

 「生まれて初めて記憶をなくしました」

 張東健(チャン・ドンゴン)は第25回青龍映画賞で男優主演賞を受賞した喜びをこう表現した。

 その日の夜、あまりのうれしさに注がれる酒はすべて飲み干し、爆弾酒(ソジュ(韓国の焼酎)やビールなど数種類の酒を混ぜた酒)を15杯も飲んだからだった。

 翌日、目が覚めると体調は悪くないが記憶が途切れ途切れだった。 張東健 は「鄭雨盛(チョン・ウソン)とデュエットをしながらドラムを叩く真似をしたらしいが、まったく思い出せない」と頭をかいた。

 そんな記憶がなくなるまで飲み明かしたという張東健は、青龍映画賞25年の歴史上初めてグランドスラム(主演賞+助演賞+新人賞+人気スター賞)を達成した。

 97年に『敗者復活戦』で新人賞を受賞して本格的にスターの仲間入りを果たした張東健は、99年に『情け容赦無し』で主演男優賞を受賞した。

 2000年と2001年には人気スター賞を2年連続して受賞した。そして2004年の今年 『太極旗を翻して』(日本タイトル『ブラザーフッド』)で主演男優賞に輝いた。

 こう書き並べたが簡単なことではない。何気にラッキーな俳優ではあるが、影で並々ならぬ努力を重ねてきた結果だ。

 2日、タイで撮影が行われる映画『台風』の準備に余念のない張東健にソウル市・ 清潭(チョンダム)洞の所属事務所でインタビューした。

―まずは受賞おめでとうございます。

 「ただ感謝するばかりです。正直言って心から受賞したいと思っていた賞ですが、他の候補がそうそうたる顔ぶれだったので厳しいと思っていました。『海岸線』と 『友へ/チング』に続いて3度目の受賞になりました。授賞式が終わってから映画賞が終わった後に薜景求(ソル・ギョング)さんからお電話を頂いてとても嬉しかったです」

―顔が痩せたとネット上で話題になってますが。

 「次回作の『台風』で海賊役を演じるために減量しました。最初は5キロが目標でしたが、実際の画面を見てあまり違いがなかったので、さらに体重を減らしました。今は以前よりも10キロ痩せた68キロあります。顔が痩せたと言われますが、12年前のデビュー当時の体重と同じです。これ以上は痩せないようにしようと思っていますが、急な減量をはじめたからでしょうか、いまだに体重が減り続けているのが悩みです。階段の上り下りをしただけで目まいがしたので、やっぱり無理なダイエットは体に良くないようです」

―今回の映画『台風』を紹介してください。

 「海賊の役を演じると言うと、皆さん昔の話しと思われるようですが、そうではありません。現代を描いた映画で、職業が海賊的なテロリストです。脱北者で韓国に憎悪を燃やす人物です」

―李政宰(イ・ジョンジェ)が演じる海軍の将校ではなく、なぜテロリスト役を選んだのですか?

 「将校役は私が演じればつまらないものになりそうだったからです。李政宰さんが私よりもずっとよく似合っていると思います」

―今まで演じてきた役は強烈なキャラクターが多かったですが、もしかして二枚目のために演技力が認められないと思ってのことですか?

 「確かに『情け容赦無し』から『海岸線』『友へ/チング』『太極旗を翻して』に至るまで、すべてが強烈なキャラクターでした(笑)。実際に『太極旗を翻して』に出演してからは、普通の役も演じてみようかと思っていましたが、『台風』のシナリオを見てあまりにも魅力的だったので出演を即決しました。まだまだ強烈なキャラクターに惹かれるようです。いつかは『ラブ・アクチュアリー』でヒュー・グラントが演じたような役を演じてみたいです」

―今年は国内よりも海外で過ごす時間が長かったようですが。

 「今年の初めから7か月間にわたて中国や内モンゴルで『THE PROMISE-無極-』の撮影を行いました。CM撮影で国内にいた以外は、ほとんど海外にいました。来年1月末まではタイとウラジオストクで『台風』の撮影を行います」

―『THE PROMISE-無極-』を撮影した時のエピソードがあれば聞かせてください。

 「極秘で進められているプロジェクトなので、何を説明すればいいか分かりません。勘弁してください。いつカメラマンに写真を撮られるかと心配で撮影現場にも毛布を被って出入りをしていました。お陰で7か月間に撮られた写真はたった1枚だけでした。エピソードと言うほどではありませんが、海抜4000メートルの高山での撮影だったので、高山病にかなり悩まされました」

―来年のカンヌ映画祭でワールドプレミアを開催するそうですが。

 「本来はカンヌ映画祭のオープニング作品として制作される予定でしたが、撮影の遅れで25分に編集されたものを使って試写会のみを行うことになりました。その他にもベネチア映画祭に出品する予定だとも聞いています」

―99年にベトナムでドラマ『医家兄弟』がヒットして韓国を代表する俳優となりましたが、最近の韓流ブームについてはどう考えていますか?

 「ペ・ヨンジュンさんを見て本当にすごいと思いました。一人の俳優が文化的な象徴になることは大きな責任を要することです。以前には俳優やアーティスト個人の直接的な努力よりは偶然にドラマや曲がヒットして海外でブレイクするということがありましたが、最近では体系的なマーケティングが重要な役割を果たしているようです。量的に韓流が溢れているだけに、レベルアップを目指さなければならないでしょう。そのレベルアップに韓国映画が一役買えればと思うのが俳優としての願いです」

―『THE PROMISE-無極-』のような海外合作映画に出演した感想は?

 「結果にかかわらず、非常に貴重な経験になりました。まったく環境の異なる現場に対する恐怖心が消え、どんな状況でも対処できる自信が身につきました。『無極』の撮影中にハリウッドから誘いを受けましたが、韓国映画のことを考えて断りました。先日ハリウッドからオファーを受けた映画は注射を打ったら一瞬にしてスーパーマンになるという内容のものでした。海外の作品だからといって、無闇に出演することはできません」

―結婚の予定は?

 「ねずみ年ですが、周りに結婚した友だちがあまりいないせいか、結婚をしようとは思いません。年子の弟は去年に結婚しましたが…。

私ももうそんな年になったのでしょうか?(笑)」

スポーツ朝鮮/キム・ソラ記者 soda@sportschosun.com
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