いつもクールな鄭雨盛(チョン・ウソン/31)が風邪を引いた姿は新鮮だった。鼻はつまって声も枯れていた。
それでも25日に行われた映画『私の頭の中の消しゴム』試写会の舞台あいさつの時よりも一日経った26日の姿の方がまだ元気そうだった。
26日の午後にインタビューした鄭雨盛は「昨日は一食も食べることが出来なくて状態がもっと悪かった。季節が変わるたびに鼻炎になって苦労する。この状態が何日も続きそうだ」と話しながら、にこりと笑った。
彼の風邪を引いた姿は新鮮だった一方で遠い存在だった鄭雨盛に親近感を持つようになった。
この感覚と同じように『私の頭の中の消しゴム』は鄭雨盛という俳優と観客の距離を縮める映画だ。
同時に鄭雨盛の魅力を再発見することができる映画でもある。鄭雨盛とスクリーンの距離はほとんどゼロに近い。それだけ純愛映画というジャンルが鄭雨盛と合うということだ。
自らも「自分がラブストーリーと相性がいいことが分かった」と言うほどだ。
長い道のりを経て純愛映画を選択した鄭雨盛に茶を飲みながらインタビューした。
『私の頭の中の消しゴム』は彼の11作目の出演となる作品。風邪を引いた鄭雨盛はインタビューの間中、何度も温かい茶を口にした。
▲ラブストーリーに対する想い
「最近、インタビューをたくさん受けているうちに今更ながら20代の頃を振り返るようになる。当時を振り返るたびに、なぜラブストーリーの映画にもっと出なかったのかと思ってならない」
30代になったらからだろうか、何度も「ラブストーリー」という単語を口に出した。
確かに鄭雨盛という名前を聞いて「ラブストーリー」を連想させる映画は高素栄(コ・ソヨン)と共演した『ビート』くらいだ。
鄭雨盛はサムスンカードのCMではとても魅力的でロマンチックな恋人役のイメージがあるが、スクリーンではそれがまったくなかった。『ラブ』『ボーン・トゥ・キル』などの映画にも出演したが、やはりラブストーリーに出演したというイメージは薄い。
しかし、今回は違う。鄭雨盛が言う青春ラブストーリーとはちょっとかけ離れているかも知れないが、多くの選択肢から最も相応しい映画を選べたようだ。すべてがうまく重なり合った。鄭雨盛が俳優としての魅力を遺憾なく発揮している。
「実は自分でもラブストーリーがお似合いなことは分かっていた。ところが常にラブストーリーの映画に出演したいと視野を広げていたが自分が満足するような作品に出会えなかった。いくつか気になったシナリオはあったが、自分が出演したら映画の感動が半減しそうだと思って断った」
そんな鄭雨盛が『私の頭の中の消しゴム』のシナリオに目を通した時には、わずか半日で出演を決めたと言う。では、もしこのシナリオを何年か前に受け取っていたらどうしたのだろうか?
「絶対に今と同じようには演じることはできなかったはずだ。もし出演していたとしても、ただ形式的な演技をしていたはずだ。いや、選ぶことすらしなかったかも知れない。もし選んでいたとしても、これよりはもう少し若い青春ラブストーリーを選んでいただろう」と言いながら鄭雨盛は笑った。
「今の自分にぴったり当てはまる役だと思う。自分が追い求め、積み上げてきたものなどすべてをキャラクターにぶつけた」
こう語った鄭雨盛は「次の作品も真実の愛の物語となるだろう」と仄めかした。
▲愛はすべてが悲劇だ
「恋愛の話しはすべてが悲劇だ。子どもの頃から見たり聞いた話のすべてがそうで、ヒット曲の歌詞もみな悲劇だった」
今回出演した『私の頭の中の消しゴム』も大工とキャリアウーマンという職業の差を乗り越えてゴールインしたが、妻がアルツハイマー病にかかり、悩み苦しむという内容のストーリーだ。
「安心できる恋愛がしたい」と言う彼は「でも、そのためには多くの犠牲が必要では?」と逆に問い返した。
長年の恋人がいることが知られている鄭雨盛。しかし、そのことに関する質問は非常に聞きづらいものがあった。
劇中、鄭雨盛が演じるチョルスは「愛している」という言葉をあまり口にしない。そこで聞いてみた。実際にもそうなのかと。
すると「NO」という答えがすぐ返ってきた。
「そんなことはない」という答えがすぐに口から出た。
「ストレートな表現が好きだ。それにストレートに表現されるのも好きだ。もちろん真剣にね」
そしてもう一つ聞いてみた。チョルスのように献身的なのかと。
「今はそんな質問に答えることが一番難しい」